そうやって轟木とユカリが世間話をしていると、やっと世津子が二人の輪の中に入って来た。
「どうしたのよ?」
「なにが?」
「なにが、じゃないでしょ? 突然現れたらびっくりするでしょ?」
と、世津子は頬をふくらませた。
「だからって、前もって知らせとくこともできねーだろ?」
「ま、そりゃそーだけど……」
「……なんか、あった?」
轟木の言い分が正しい。世津子は言いくるめられて、唇を尖らせた。
「未来から?」
ユカリがたずねる。
「ええ、まぁ」
「……なんか、あった?」
短いやり取りであったが、幼馴染の世津子は轟木の態度に暗い違和感を覚えたのだろう、心配そうに轟木の顔を覗き込んだ。
轟木にしてみれば、亡くなったはずの妻を目の前にしているのだ。戸惑わないはずがないし、まともに顔も見られずにいた。
(世津子……)
気を緩めると、目頭が熱くなる。
だが、世津子が亡くなったことを悟られるわけにはいかない。
「お前が、自分のこと『老けた、老けた』って言うから……」
轟木はあわてて嘘をついた。
「私が?」
「だったら俺が過去に戻って、本当に老けたかどうか見てきてやるよって」
「それ確認するために、わざわざ?」
「お前がしつこく『老けた、老けた』って言うからだろ?」
「え? あ、そう? なんか、ごめん……」
「いや、お前が謝っても仕方ないだろ?」
「あ、そっか」
「ったく……」
そう言って、二人は笑いあった。世津子にとってはいつもの、そして、轟木にとっては五年ぶりの談笑となった。そんな二人をユカリがじっと見つめている。
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