「戦力外通告」受けたプロ野球選手"逆転の人生" 寺田光輝、大嶋匠、島孝明が向かう"次は勝つ道"

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高校卒業後、国立三重大教育学部に進学するも、たったの3カ月で休学。その後、実家の病院を継ぐ決意をして、改めて三重大学医学部を目指すために浪人生活を始める。その最中、筑波大学に進学した後輩とキャッチボールをした際に言われた一言が、寺田のプロ野球への思いに火を付けた。

「バイトしながらもトレーニングは続けていました。そんなときに筑波大に行った後輩が帰郷していてキャチボールをしたんです。『先輩、球速くなってますよ! うちに来てください。うちだったらプロも狙える大学ですから』って言うんです。勉強もしてなかったため医学部を受けられるほどの学力はありませんでした。やっぱり野球がやりたいという思いが沸沸とわいてきて、だったら筑波を受けてみようと思いました」

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三重大を中退し、筑波大に入学して野球部に入ったものの、目を見張る成績は残せず、公式戦12試合、中継ぎで投げて1勝1敗に終わり、大学野球生活を終えた。さすがにこの成績ではプロは無理だと諦めたとき、筑波大の奈良隆章コーチから「挑戦してみろ」と背中を押されたことで、BCリーグの石川ミリオンスターズに入団。オーバースローからサイドスローに転向したことで、球威が格段に増した。

そして、2017年のドラフト会議でDeNAベイスターズから6位で指名され、念願のプロ入りを果たしたのである。

しかし、2年間の現役生活の後、戦力外通告を受けてしまう。

1年半の受験勉強で医学部に合格

26歳でプロ野球選手になり、誕生日前の27歳から1年半、受験勉強を開始。そして2020年7月に見事、東海大学医学部の編入試験に受かったのだ。彼の夢を聞いた。

「希望を言えば、町医者とスポーツ医学の両方をやりたいんです。大好きな地元の町の過疎化が進んでいてちょっと大変みたいなので、おこがましいかもしれませんが、町を盛り上げられればと思っています。自分の経験を生かしたスポーツ医学もやっていきたい。アスリートの怪我を外科的な部分ではなく、内科的アプローチができるのではないかと。幸いにも僕だったら選手側の気持ちを一番汲み取れるんじゃないかと考えています」

グラウンドでは華々しい結果は残せなかったかもしれないが、人生という名のグラウンドで大いに羽ばたく元プロ戦士たち。新たな人生を切り拓いたパイオニアとして、私たちは学ぶべきことが多い。

松永 多佳倫 ノンフィクション作家

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まつなが たかりん / Takarin Matsunaga

1968年11月29日、岐阜県大垣市生まれ。琉球大学卒業。琉球大学大学院人文社会科学研究科中退。出版社を経て2009年8月よりフリーランスとなり沖縄移住。ノンフィクション作家として沖縄の社会学を研究中。主な著書として、『確執と信念 スジを通した男たち』(扶桑社)、『偏差値70からの甲子園-僕たちは野球も学業も頂点を目指す-』(集英社文庫)、『マウンドに散った天才投手』(講談社+α新書)、『善と悪 江夏豊のラストメッセージ』(KADOKAWA)、『永遠の一球-甲子園優勝投手のその後-』(河出書房新社)など。

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