防衛増税も迷走「岸田政権」に今、決定的に足りぬ事 旧態依然の手法、さらなる失速は避けられない
さらに43兆円の財源をめぐっては、政府・自民党の議論が混乱する。歳出削減などで財源をひねり出すが、それでも足りない1兆円強について新たな税負担を求めることになった。たばこ税を引き上げて2000億円、復興特別所得税(2.1%)を1.1%に引き下げる分、新たな付加税(1%)を設けて2000億円をそれぞれ確保する。さらに法人税に4~4.5%に上乗せ税率を課して7000億~8000億円を確保する。
ただ、自民党内から増税への反対論が相次いだほか、閣内でも高市早苗・経済安保相が「賃上げマインドを冷やす発言を、このタイミングで発信された総理の真意が理解できません」と疑問を呈した。自民党税制調査会での議論も紛糾し、最終的には増税の内容は予定通りとしながら、実施時期は2023年度に詰めることになった。事実上の先送りである。
決定プロセスに問題はなかった?
岸田首相は防衛費の増額について「内容、予算、財源を一体として決める」ことを明言していたが、実際には、43兆円という予算額が先行して示され、その後に自民党税調を中心に財源が話し合われたものの、実施時期などを確定させることはできなかった。財源として想定している歳出削減も具体的な中身は明確ではない。
防衛力整備の具体的な内容は防衛力整備計画の「別表」として、イージス艦2隻、早期警戒機5機、護衛艦12隻、潜水艦5隻などが示された。ただ、こうした装備を運用する自衛隊の要員不足をどう解決するかといった問題は残ったままだ。
岸田首相は、今回の防衛費増額について「防衛政策の大転換」と位置づける一方で、「決定プロセスに問題があったとは思わない」と述べている。
実際の決定プロセスは、首相、外相、防衛省らでつくる政府の安全保障会議をたびたび開催し、佐々江賢一郎元駐米大使を代表とする有識者会議で議論を進め、財源については自民党や公明党の税制調査会で論議を重ねた。さらに年明けの通常国会で予算案や国家安全保障戦略などが審議されるという。
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