その点、家康はつねに現実的で、なおかつ「失敗」しない、「一か八か」の賭けをせず守り切りながら成長していくという意思決定方法は、われわれの暮らしにおいても学べる部分が多いでしょう。
しかしながら庶民にとっては、家康はあまりにも「現実的」で意思決定にも爽快感がありません。つまり「憧れ」を抱くようなヒーローではないのです。
家康は超人でなく、われわれと同じ人間である。それが家康という人物の評価が、信長や秀吉と一線を画す要因なのでしょう。
新しいヒーロー像を見出せるか
つねに自分ではコントロールできない状況の中で意思決定を迫られ、苦渋の決断を行う。家康は経営者だけではなく、今を生きるわれわれと同じように幾多の悩みにぶち当たってきました。まさに「どうする?」の連続です。ただ、家康の凄みは、そんな究極の「どうする?」の意思決定で一度も決定的なミスを犯さず、徳川家ばかりか日本に265年の長きにわたる平和を築いたことです。
信長も秀吉も最終的には決定的な判断ミスを犯しました。信長は明智光秀という部下を見誤り、本能寺で非業の死を遂げましたし、秀吉は朝鮮出兵という大きな判断ミスを犯し、政権の弱体化を招き、それが豊臣政権の崩壊の大きな要因となりました。
自分で状況を支配する力を持つヒーローは、やがてその強大な力ゆえ、その力をコントロールできなくなり滅んでいく。信長や秀吉だけでなく、歴史はヒーローの最期を雄弁に物語っています。彼らの真逆にいる、いわばアンチヒーローともいえる徳川家康こそ、これからの時代を生き抜くわれわれにとっての真のヒーローなのかもしれません。
つねに「どうする?」と自分に問いかける。その習慣こそが、われわれを違う場所に連れて行ってくれる鍵を握っているのではないでしょうか。
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