ギャラは出て500円「地下芸人歴30年」の僕の日常 いつかどうにかなるとみんな信じてきた

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『エンタの神様』のオーディションで「炊飯器暴走族」というネタをやったときも、ものすごく滑りました。

「夜露死苦」とマジックで書いた炊飯器に小さな日の丸の旗を立てて、それを両手で抱えてブンブンブンブン言いながら走り回るネタをやったのですが、審査員をやっていたある有名プロデューサーさんは、僕に向かってこう言いました。

「君の目的は何や?」

地下芸人は埋もれてはいますが、横のつながりがとても強く、仲間のうちの誰かが毎週のようにライブを開催するので、そこにかわるがわる友情出演をします。

ライブ会場は中野の「TWL」だったり、下北沢の「空間リバティ」だったり、新宿の「バイタス」だったりします。たいていギャラは出ません。出ても500円とか、よくて1000円ぐらい。だから、友情出演が基本なのです。

ギャラが出ない舞台に立つ理由

なんでギャラが出ないかというと、たとえば僕がフリーの時代に主催していた「靴擦れ寄席」の場合、入場料が800円ぐらいだったので、仮にお客さんが30人入っても、会場費とトントンぐらいにしかなりません。

しかも、受付で靴擦れを見せると入場料がタダになるシステムだったので、靴擦れのお客さんが多い日は赤字になってしまうのです。

当然、出演者に払うお金なんてないし、みんなそれを分かっていて出演してくれるのです。

映画監督でもあるインタレスティングタケシは、「挙動不審寄席」というライブを主催していました。

僕はヘヴさんと一緒に出演したことがあります。

当時、ヘヴリスヨン岩月さんの芸名は「2代目ベッキー」でしたが、本物のベッキーさんの事務所からクレームがついて芸名を変えたとのことでした。

「挙動不審寄席」がどういう寄席かというと、その名の通り、挙動不審の芸人しか出られない寄席です。

もどってきたアンケート用紙には、「演者さん全員が挙動不審なので、エンディングトークなんて、もう突っ込みどころ満載、おいしい食材てんこ盛りの状態でしたが、MCの人も挙動不審者だったので誰のこともいじらないというか、いじれないまま、おいしい食材がみんな腐っていってました」と書かれていました。そのMCは僕でした。

大本営八俵さんと三浦マイルドと僕の三人でやっていた「三人会」は、絶対にテレビではできないトンデモ話や放送禁止用語連発のライブで、トークの腕を磨くには最高の舞台でした。

「三人会」は新宿二丁目の「アイソトープラウンジ」でやっていて、多いときはお客さんが80人ぐらい入りました。ただ、普段のライブは小さな劇場でやったり、ビルの貸し部屋みたいなところとか、公民館の和室とか、たいてい20~30人ぐらいしか入らない狭い会場です。

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