僕の知り合いに、横須賀歌麻呂さんという人がいます。
歌麻呂さんはいつもサングラスをかけていて、イケメンで、真面目で、クールで、ピュアで、思いやりに溢れた常識人で、風俗に1回も行ったことがないのを誇りにしている人です。
ところがひとたび舞台に立つと、「○○毛高校の校歌」とかいう、ものすごくえげつなく、サイコーにセンスある下ネタしかやらないのです。
いったい何が彼をそうさせるのか、誰にもわかりません。
日頃はティッシュ配りのバイトをしているそうですが、僕の知り合いがたまたまDVDのレンタルショップの新宿本店でバイトをしていて、しょっちゅう歌麻呂さんがアダルトビデオを借りに来るので、こっそり貸し出しデータを調べてみたら、なんと新宿本店で第2位の貸し出し本数だったと言っていました。
地下芸人がなぜ埋もれているのかと言いうと、ヘヴリスヨン岩月さんみたいにテレビで放送できないネタをやっていることもあると思いますが、よく言えばあえて少数派に向けた笑いを追求しているから、というのが正解かもしれません。少なくても、本人たちはそう思っています。
舞台に本物の警察官が入ってきた
僕の先輩芸人に、ゆきおとこさんという人がいます。
ゆきおとこさんはいつも昭和っぽい真っ赤なダブルのスーツを着て舞台に出てきては、いろいろと愚痴を言いながら、最後に「引っ張り回してやりましたよ」というギャグをかまします。
「昨日、手賀沼という沼の周りを散歩していたらネッシーがいたんで、引っ張りまわしてやりましたよ」
こんな感じです。
ゆきおとこさんは存在自体が面白い人なんですが、下北沢のライブハウスで一緒にトークライブをやったときは、なんと言えばいいのか……ものすごかったです。
ライブの最中だというのに、いきなり後ろのドアがバンと開いて、本物の警察官が入ってきたのです。
僕はてっきり、ゆきおとこさんの仕込みだと思いました。
しかし、警察官は真剣な顔をしてこう言うのです。
「いま、危ないふたり組がいると通報があったけど……」
僕たちが舞台の上でキョトンとしていると、警察官は事情を察したらしく、勝手に爆笑し始めました。
「君たち、頑張れよー」
そう言い残すと、ライブハウスを去って行きました。
あまりにもネタが滑り過ぎて、怒ったお客さんが携帯電話で警察に通報してしまったらしいのです。
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