東日本大震災、CSRに積極的な企業はどのような支援を発表したか
3月11日に発生した東日本大震災は戦後最大の死者・行方不明者を出し、食料や燃料が行き渡らない避難場所、危機的状態の原子力発電所など東北地方を中心に緊急事態が続いている。1人でも多くの行方不明者を救出し、食料や燃料を配布し、原発の被害を最小限に抑える。それぞれ一刻も早い対応が望まれる。
この危機的状況が落ち着けば、続いて復興活動が始まる。緊急事態は命を守る支援が必要だが、その後は人間らしく生きていくための支援が必要となる。
復興に向けて大きな役割を期待されるのが企業だ。
すでに日常生活に深く関わる携帯各社や大手スーパーなどは緊急状況下で本業に関係した支援活動を行っている。食品、飲料などの消費関連企業も自社製品の提供などを開始している。
さらに、こうした企業以外からの支援の輪も広がっている。では、具体的に各社はどのような支援を発表しているのだろうか。今回は自動車、電機を中心とした日本を代表する大企業が並ぶ第5回CSR企業ランキング上位10社の支援策をまとめてみた。
CSR企業ランキング上位10社の中でいち早く支援を発表したのがCSR企業ランキング1位のトヨタ自動車だ。震災翌日の12日にはプレスリリースで3億円の義援金と現物、サービスの支援検討を発表した。
同じく12日に発表したのが3位パナソニック。3億円の義援金とラジオ1万台、懐中電灯1万個、乾電池50万個などの支援物資寄贈が主な内容だ。
翌13日には2位ソニー、6位リコー、7位富士通が発表した(詳細は一覧表参照)。2位のソニーは3億円の義援金に加え、従業員からの募金に同額を会社が付加して支給するマッチングギフトも実施する。さらに緊急時に欠かせない自社製ラジオ3万台の寄贈も発表している。
14日の発表は、5位ホンダなど5社。ホンダは3億円の義援金に加え、ガソリン発電機および家庭用カセットガスを使用する発電機合計1000台およびカセットガスボンベ5000本を提供。さらに発電機の操作説明要員の派遣も行うという。
いずれの企業も義援金だけで各社1億円以上の支援を発表。この金額を合計すると25億円となる。対象となった10社は自社の工場などが被災しているケースも少なくない。それにも関わらず遅くとも14日の月曜日には支援内容を発表している。これは普段から危機対応について詳細に行動方針を定めているためであろう。社会の一員としての大企業の役割を強く認識している証拠と考えられる。
上記の企業は収益の柱はすでに中国など海外となっている。工場の海外移転も進み一般の人からは少しずつ遠い存在になりつつある。しかし、今回のような日本の危機に一緒に立ち向かう姿は被災者だけでなく国内での一体感を生んでいく。
たとえば、13日にラジオ3万台の寄贈を発表したソニーなどはインターネット上で大きな話題になっている。こうしたことはどんな広告よりも効果のある社会との太いつながりになるはずだ。
遠い存在から身近で信頼される会社になれば、企業、顧客、従業員、地域社会などの関係はこれまで以上に強まる。世界的に高い法人税など国からの支援もあまりなく世界で孤軍奮闘の競争を続ける大手企業を日本の代表として応援しようという人たちも増えてくるだろう。これが結果的に停滞する日本経済を復活させるきっかけになるかもしれない。
さて、現在の危機的状況を乗り越え、被災地が本格的に復興活動に入るとき、大手企業が活躍できる場は多い。各社の技術やサービスを使った被災者への支援、被災者の雇用創出など各社可能な範囲での積極的な支援を期待したい。大企業の支援は多くの人々に生きる勇気を与え、必ず日本の将来にプラスになるはずだ。
■CSR企業ランキング上位企業・被災地支援の内容
(各社ホームページ・プレスリリースによる。3月17日時点)
1位 トヨタ自動車
3/12支援を発表
・義援金3億円
・他現物、サービスなどの支援検討
2位 ソニー
3/13支援を発表
・義援金3億円(ソニーグループ)
・マッチングギフトの実施
(従業員から災害募金を募り、同額を会社も支給する)
・自社製品ラジオ30,000台寄贈
・他グループ製品の提供検討
・他グループ企業からの発表
3位 パナソニック
3/12支援を発表
・義援金3億円
・支援物資(ラジオ1万台、懐中電灯1万個、乾電池50万個)を寄付
3/15追加支援を発表
・ソーラーランタン(三洋電機製)4,000個を寄付
・労使共催で、従業員によるカンパを実施
4位 富士フイルムホールディングス
3/14支援を発表
・富士フイルム、富士ゼロックスと協同で義援金3億円
・医療用の超音波画像診断装置「Fazone M」、ほこりやウィルスを防御するマスク「アレルキャッチャー」100万枚など4.7億円相当の支援物資を寄付
5位 ホンダ
3/14支援を発表
・義援金3億円
・ガソリン発電機および家庭用カセットガスを使用する発電機 合計1,000台およびカセットガスボンベ5,000本を提供
・発電機の操作説明要員の派遣
3/15追加発表
・被災地の通行実績情報マップをGoogleと提供
6位 リコー
3/13支援を発表
・義援金3億円
3/14支援について追加発表
・被害者へのお見舞い
・追加支援への決意
7位 富士通
3/13支援を発表
・義援金1億円
・支援物資の提供
8位 デンソー
3/14支援を発表
・被災地域への人の派遣と生活支援物資の送付を開始
・福島県田村市のデンソー東日本で建屋を避難所として提供し、本日から避難者の受入れを開始
・被災地域への最大限の支援を行う
3/16支援内容の詳細発表
・義援金2億円(デンソーグループ)
・福島県に完成間近のデンソー東日本の建屋を開放し、約2,000名の方々に避難所として活用と防災備蓄食料と毛布の提供
9位 シャープ
3/14支援を発表
・義援金1億円
・緊急避難場所への液晶テレビなどの寄贈を検討
10位 日立製作所
3/14支援を発表
・義援金3億円
(岸本 吉浩 撮影:大塚一仁 =東洋経済オンライン)
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