サイゼ「値上げせずジリ貧」と思う人に欠けた視点 大盛販売終了を同社の経営・歴史から見ると…
サイゼリヤは国内1069店舗、海外478店舗(いずれも2022年8月期末現在)を展開している。大量仕入れによるスケールメリットで、低価格を維持できるのが外食チェーンのメリットだが、裏を返せば、ひとたび供給不足になってしまうと、一律のメニュー展開は難しくなる。
消費者にとっては、「価格」や「内容量」といった、数値化できる指標がわかりやすい。その反面、「品質保持」や「安定供給」「コスト削減」といった、消費者の視界に入りづらいものは、なかなか評価軸になりにくい。
国民的チェーンのサイゼリヤだからこそ、メニューが販売終了となれば必ずと言っていいほど話題になるが、それでも「国内外1500以上の店舗に、同じ品質で商品を提供すること」の大変さまでは、なかなか想像されないものなのだ。
もし今後値上げをしても、理解を得られる可能性が高い
とは言え、そんなサイゼリヤも、いつまで値上げをしないで続けられるかはわからない。世の中の情勢は移り変わり、適切な戦略はその時によって変わるものだ。
思えば、ランチで販売されていた「大盛」がグランドメニューに導入されたのも、2020年7月のグランドメニュー改定のタイミングだった。この時、サイゼリヤはコロナ禍での接触機会を減らすべく、税込価格の末尾を「00円」もしくは「50円」に統一し、1円、5円、10円硬貨の使用を削減すると発表。あわせてクレジットカードや電子マネーなどのキャッシュレス決済を導入した。
価格統一によって「ミラノ風ドリア」が1円値上げされるなどの影響が出たが、消費者の反応は好意的だった。値上げ幅が少なかったことと、むしろ値下げになった商品もあったこと。そして「硬貨を削減する」という、だれしも合理的だと納得できる理由が、後押しになった。
今回の大盛スパゲッティの販売終了には、「値上げしてもいいから残してほしい」という声が、ネットユーザーから見られている。値上げに消極的な消費者も多いなか、そうした反応が出るということは、とくにコロナ禍以降の企業努力が、しっかり消費者に伝わっている証拠だろう。
原材料費の高騰や、円安が続くなかでも、サイゼリヤは「ギリギリまで抵抗している」印象を与えている。このイメージを今後も保てるのなら、もし本当に値上げを余儀なくされる局面が来ようとも、すんなり消費者に受け入れてもらえるのではないだろうか。
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