「ちゅ〜る」が猫からも人間からも愛されるワケ またたびが入っている?植物由来はおいしい?

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少なくとも容器に関しては、ちゅ〜るに限らず、「餌の出しやすさ」「空き容器の捨てやすさ」「保存しやすさ」が飼い主にとっての重要な検討要素である。プラスチックカップを使った「CIAOカップ」などは、殺菌可能なプラカップ容器という、人間用にも使われていない技術が採用された画期的な商品だそうだ。

このように、猫の喜ぶ品質管理を維持し、かつ飼い主が扱いやすい容器は商品開発においても重視されている。アイテム数が多くなる要因でもあるだろう。

SDGsの潮流は猫にも及んでいる

その他商品開発に反映されているのが社会情勢だ。2022年秋に発売された商品では、新しく「植物由来たんぱく質」の商品が加わった。これは従来製品に含まれているたんぱく質量の30%をエンドウ豆由来に置き換えたもの。SDGsの潮流は猫にも及んでいるのだ。

グレインフリーや植物由来たんぱくの志向は猫用おやつにも及んでいるようだ(筆者撮影)

といっても、猫をベジタリアンやフレキシタリアンにする意図はない。水産資源の持続性の観点や、鶏ささみであれば鳥インフルエンザなどで材料が不足したときを考慮したリスクヘッジの意味合いが大きいそうだ。

新商品の開発においてはもちろん、都度、猫が試食を行っている。取締役社長の稲葉敦央氏の飼い猫のほか、開発部に所属する猫、一般モニターなどだ。「どのような味が猫に好まれるか」を実感するために、社員が味見することもあるという。

なお、植物由来たんぱく質ちゅ〜るは、通常のものに比べ食いつきの点で課題があったが、改良と猫による試食を繰り返し、社内基準をクリアした品質になったそうだ。確かに、筆者の飼い猫にも与えてみたが、反応は通常のちゅ〜ると同様だった。

このように10年間、次々に新しい種類が生まれ続けてきたCIAOちゅ〜る。気になるのが売れ行きだが、いなば食品では個々の商品の売り上げなどについては公開していない。

グループとしては、2021年10月から2022年9月末までの売上高が1020億円になり、非上場の食糧加工会社としても国内最大規模になった。

理由としては、食品、ペットフードともに知名度が向上したことを挙げている。また2020年9月にドライタイプのペットフードに強いスマックを、2021年9月に冷凍食品メーカーのヤマガタ食品の株式を取得し、傘下に加えた。直接的にはこれらが売り上げ増につながったと考えられる。

2034年の目標として、販売1兆円、社員数4万人、海外比率80%を設定し、さらに主力のペットフード事業では世界のトップ3を目指すとする。現在では、アメリカ、EU、アジアの主要国に37支店、8工場となっているが、さらに海外事業を拡大していく構えだ。

日本は食の分野においてヘルシーであるとの世界的な評価を得ている。ペット部門でも、健康への配慮や人間と同様の食品管理といった特徴を打ち出していくことで、存在を際立たせることができるのではないだろうか。

またペットフードのグローバル企業として、動物保護の活動に力を入れていくことも期待したい。同社はその点では、2022年上半期にはウクライナの犬猫支援に26万食のペットフードを贈っている。日本では環境省の発表によると、2020年度(令和2年度)の猫の殺処分数は1万9705匹と過去最少になったが、ゼロにするまでには多くの課題がある。引き続き、活動家、企業、個人とさまざまなプレイヤーで、不幸な動物を減らす取り組みを盛り上げていく必要がある。

圓岡 志麻 フリーライター

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まるおか しま / Shima Maruoka

1996年東京都立大学人文学部史学科を卒業。トラック・物流業界誌出版社での記者5年を経てフリーに。得意分野は健康・美容、人物、企業取材など。最近では食関連の仕事が増える一方、世の多くの女性と共通の課題に立ち向かっては挫折する日々。contact:linkedin Shima Maruoka

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