値引き交渉不可能なテスラに顧客が満足する理由 「合理化」と「おもてなし」の融合がDXのツボ
しかし、こちら側の不具合報告はすべてテスラ側で情報共有されており、予約の数日前に担当者より修理内容の確認の電話連絡があり、顧客との対話を開始するアナログのおもてなしもある。そのような準備の結果、店舗での修理はすぐに完了する。
つまり、テスラでは不具合の報告から修理に至るまでのプロセスのほとんどが、デジタル化によって合理化されている。そして、電話での事前確認と最後の対面対応の部分だけ、アナログ対応を採用しているのだ。
こうしたアプローチに対して「ユーザーに不具合を報告させるのか!」と怒る顧客層をテスラはターゲットとしていない。ていねいではあるが、担当窓口が変わるたびに不具合状態を説明し直さなければならない、属人的な対応のほうがストレスだと感じる層に「刺さる」サービスを作り上げ、顧客満足度を向上させているのだ。こうした対応こそが、デジタルを使いながらも、顧客とメーカーの距離を近づけるサービスである。
サークルのノリをもつオーナーズクラブ
もう1つ注目したいのは、オーナーコミュニティである。テスラはアメリカやカナダ、日本などテスラオーナーたちが独自にオーナー団体「テスラオーナーズクラブ」を立ち上げ、情報交換したり、親睦を深めるイベントを開催したり、新機能の研究会などを実施している。私自身、テスラに乗って1年になるが、オーナーズクラブでの交流はサークルのノリで、リアルの集まりもあり、非常にアナログであると感じている。
そのようなアナログなコミュニティの仲間が、ユーチューバーとなって、テスラの自動車のインプレッションを行う。それはテスラにとって重要な「マーケティング活動」であり、ユーチューバー自身は広告収入を得ることができ、ユーチューブの視聴者は価値ある本当の情報を得ることができる。視聴者が購買を検討しているならば、意思決定の材料となる。
テスラは営業活動やセールスマーケティングを極限に絞っていると述べたが、こうした背景があるのだ。Win-Win-Winの関係ができている。もし損失があるとするならば、マーケティング費用が投下されない既存メディアなのかもしれない。
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