値引き交渉不可能なテスラに顧客が満足する理由 「合理化」と「おもてなし」の融合がDXのツボ

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企業にとって最も利益をもたらす顧客に対して、通常、人的リソースやコストを投下して個別対応する。最もアナログの価値を投入するところであり、対面での個別訪問などを行う。時には食事会などもする。こうしたアプローチを「ハイタッチ」と呼ぶ。

次は、企業にとって平均的・中間的な利益をもたらす顧客に対して、一定の人的リソースやコストは割くものの、手厚くは対応しない。専任の担当者を配置しないで、複数で顧客に対応したりする。「ネームド」というアプローチだ。個別対応を増やさないように、標準的でデジタルな対応で合理化を心がけつつ、時にはアナログ的な個別対応を行い、バランスをとっている。

最後の「テリトリー」はマスに向けたアプローチである。SNSや自動作成のメールなどデジタル技術を活用する。人的リソースをかけずに多くの顧客と接点をもつことが目的である。ただし、「テリトリー」の顧客が重要顧客になってきたタイミングで、「ネームド」に扱いを変え、アナログ的個別対応を増やしていく。

3つのアプローチをまとめたのが次の図である。

(外部配信先では図や画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

3タッチの概念図
出所:各務茂雄『日本流DX』(東洋経済新報社、2022年)

デジタルとアナログをミックスさせた接客

テスラ製品の値段と従来のビジネス常識を考えれば、テスラは「ハイタッチ」のアプローチをしているのではないかと考えるのが一般的だろう。

しかし、同社と顧客の接点はすべてオンラインでありながら、試乗については1時間ご自由にどうぞと、EVをフルで体感できるショールームのようなところもある。デジタル的合理化とアナログ的おもてなしをミックスしているわけだ。つまり、「テリトリー」から入って「ネームド」となる。本来、「ハイタッチ」で売る製品を、「テリトリー」寄りの「ネームド」で売っているから、利益が出るのだ。

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