値引き交渉不可能なテスラに顧客が満足する理由 「合理化」と「おもてなし」の融合がDXのツボ

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なぜこのようなことが成り立つのか。テスラオーナーは、新技術にいち早く触れたい「イノベーター(革新者)」や「アーリーアダプター(早期導入者)」が大半である。そうした人たちは合理性を重視し、大げさでウェットな接客を嫌う傾向があるようだ。オーナーが欲しいのはテスラ車を運転することで得られる体験であり、合理的なサービスである。それがテスラのビジネスモデルを成り立たせている。

顧客満足度と販売スピードのバランス

一方で、かゆいところに手が届くような柔軟な対応もゼロにしたいわけではないようだ。たとえば、私がはじめてテスラ車を購入した際、3カ所の不良が発覚した。誤解のないようにつけ加えると、走行機能を司る車載ECU(Engine Control Unit)を制御するソフトウェアの不具合ではない。降雨時にリアランプが曇ったり、ウィンドウの開閉時に異常音がしたりといった程度の不具合だ。とはいえ、日本の大手自動車メーカーの車であれば、お目にかからない初期不良である。

想像するに、製品の品質が上がり切るまで販売を待つよりも、クリティカルでない部分については一定のレベルまでいったら販売するというアプローチ、ちょうどソフトウェアのアジャイル開発のように追加や変更に対応可能なアプローチをとることによって、ユーザーの満足度と販売スピードのバランスをとっているように感じる。

クリティカルでない不具合の解決は、ユーザー自らがサポートセンターにスマートフォンで申し込む。リアランプの不具合状態を撮影して報告するのはすべてユーザー側だ。そのうえで来店の日時を予約する。これだけ聞くと「すべてセルフサービス?」と思うかもしれない。

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