工事開始から6年「立石再開発」なかなか進まぬ訳 東京屈指の飲み屋街を変える大胆な計画
1990年代から協議が始まった京成押上線京成立石駅周辺の再開発が難航している。2016年からは駅高架化工事が始まったものの、南北3カ所で行われるとされる再開発のうち、先行する北口再開発ではようやく葛飾区役所移転が議会で採択されるほか、南口では地権者の理事が準備組合を訴えた事案も発生している。何が起こっているのか追った。
街の風景を大きく変える大胆な再開発
立石では北口、南口の東地区、西地区の3カ所で再開発計画が進行している。全部完成すると3棟のタワーマンションその他が誕生し、現在の地域住民をはじめ、多くの人に愛されてきた商店街・飲み屋街はその大半が消失するというもの。街の風景を大きく変えるという意味では数ある再開発の中でも大胆なプロジェクトといえるだろう。
大胆な計画を実行するためにはお金がかかる。1997年の葛飾区による報告書(この時点で対象となっていた地区は現在の北口地区にあたる「1街区」「2・3街区」の合計)で、295億円となっていた北口再開発の予算は、2021年10月に東京都が北口の再開発組合を認可した時点で約932億円に膨らんでいる。
もちろん補助金や、マンション販売などで賄う計画だが、それでも予算は約266億円足りないとの試算もある(数字は立石駅北口地区市街地再開発組合事業計画書および定款から)。そのままでは採算が取れないため、区役所を移転させ、それで収支を合わせようというのが現在の計画だが、庁舎移転がなければ成り立たない収支計画や、街の個性を失うことになる開発には疑問の声も多い。
地域外に向けてこの現状を発信している「立石をまもる会(旧のんべえの聖地を守る会)」事務局の塔島麦太氏によると、移転を決定するには「葛飾区役所の位置を定める条例」を制定する手続きが必要で区議会に諮る必要があるが、9月の定例会は与党を含む区議から強い反対があって延期に。今度は12月15日に提出される予定だが、「移転はまだ決定されていない」と訴える。
移転を可能にする条例を否決、あるいは提出再延期に持ち込めないかと、塔島氏は地元で100人以上を集める決起集会を開き、地域の各戸にビラをまき、街頭でチラシを配る、区議会議員にアプローチするなどの手を打っている。
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