工事開始から6年「立石再開発」なかなか進まぬ訳 東京屈指の飲み屋街を変える大胆な計画

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南口の2つの開発のうち、早々に再開発組合が結成されるかに思われていた東地区では準備組合の理事(当時)だった地権者Aさんが自らの準備組合を相手取って情報の開示を求める訴訟を提起。判決が出る前に準備組合設立以来事業協力者として再開発を推進してきた大手建設会社が撤退を表明した。実際、同組合事務所の掲示板にはその会社に代わり、2022年9月に新たな事業協力者が決まったことを伝える掲示が貼られていた。

立石駅
再開発とは別に鉄道の高架化工事は進んでいる(写真:筆者撮影)

再開発のリスクを知りたいと理事になったが

Aさんに話を聞くと、再開発自体に反対しているわけではなく、都市再開発法はいい法律と評価しているが、塔島氏らが配り続けているチラシと準備組合が言っていることにずれを感じ、事実を知りたいと組合に加入したという。ところが、それでもAさんが必要と考える情報を教えてもらえなかったため、自ら役員に立候補し、5年前に理事に就任した。

Aさんが情報を知りたかった背景には、立石のような「第一種市街地再開発」では、組合員(=地権者)が共同で事業のリスクを負う形になるからだ(*)。例えば、バブル崩壊後には岡山県津山市で巨大な再開発ビルを建てたものの巨額の損失や、事業費の不正流用問題が発生。理事のみならず、一般権利者も自らの財産をすべて失い、自分の会社の破産を申し立てなければならない事態にまで追い込まれた事案がある。

津山市ではその後、市議会が中心となって同事業に関する「調査特別委員会報告」をまとめており、現在も市のホームページで見ることができる。そこには組合員たちがデベロッパー側や組合幹部の言い分を鵜呑みにして、事業全体を他人事のように認識し、自分たちの責務を放棄してきたことなどが破綻を招いたなどと厳しい文言が並んでいる。

Aさんは自分たちが関わる再開発がそのような事態になることを懸念、自分にも地権者60余名の生活、財産がかかっている再開発を成功させる責任があると思ったという。

「再開発が失敗したら、責任を問われるのは私たち。そのために財産を失うことになるかもしれない。再開発を成功させるためには組合員、理事会がしっかりしないといけないと考えたのです」

理事に就任したAさんだが、それでもAさんが必要と思う書類の閲覧は叶わなかった。そこでAさんは東京地裁に情報開示を求める訴訟を起こし、2020年1月22日に判決を得た。

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