キーエンス出身者が解説「無駄と付加価値」の違い 顧客ニーズとずれた高スペック商品が溢れる訳

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このような悲劇は、「価値が理解されていない状態」から生み出されてしまいます。開発者が悪いとか、マーケティング担当が悪いとか、誰か特定の部門・人に責任があるという話ではないのです。

価値という概念を知らなかった、理解していなかった。これがすべての元凶となっているのです。逆に、もし、「価値とは何か?」を経営者や開発者がわかっていれば、このような大失態は事前に防ぐことができるのです。

価値を理解していないこと以外にも、陥りがちな罠があります。売り手は、「なぜお客様が買うのか?」ではなく、「どうすれば売れるのか?」から先に考えてしまうのです。

「どうすれば売れるのか?」は売り手が主体の発想です。だから、まず売れるための要素、スペックを探してしまうのです。しかし、ビジネスのゴールはお客様に買ってもらうことですから、まずは、「なぜお客様が買うのか?」という、お客様を主体にした発想からスタートすべきです。

私自身、コンサルタントとしてクライアントに一番注意して聞くのは、この点です。「なぜ、あなたのお客様は、御社の商品・サービスを買っているのですか?」。

この問いに対する答えを見つけると、お客様に買ってもらうためのヒントが見つかるはずです。そして、「どうすれば売れるのか?」という考えでどれだけのムダをしてきたのかがわかるはずです。

まずは最初の第一歩、「どうすれば売れるのか?」から「なぜお客様が買うのか?」への思考のシフトチェンジをしてみてください。

新事業・新商品の利益を激減させる「見切り発車」

かつて私が在籍したキーエンスでは、マーケットイン型、つまり、顧客のニーズにフォーカスした新商品企画・開発がなされていました。

・なぜお客様が買うのか?

・本当にその商品・機能は使われるのか?

・使われたら本当に役に立つのか?

・どんな役に立つのか?

について、企画・開発前に徹底的に突き詰めるのです。

顧客のニーズを突き詰めるプロセスにおいて欠かせないのが「市場調査」です。しかし、多くの企業では、この「顧客のニーズを突き詰める」こと、つまり市場調査をキーエンスのように徹底して行っていません。

そう言うと、多くの人は、「いやいや、うちも市場調査はしていますよ」と反論したくなるかと思います。

では、お聞きしますが、その市場調査は、買い手に直接聞いていますか? その商品を作ったら、お客様から本当に「買う」と言われていますか? おそらく、多くの会社は、ここまで徹底できていないのではないでしょうか。

キーエンスはメーカーです。しかも特注ではなく「標準品」を作っているメーカーです。「標準品を作っているのに、新商品の企画・開発の前に、買い手にそこまで細かいニーズを聞くなんて、おかしいじゃないか」と思われるかもしれません。

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しかし、キーエンスの新商品企画者は、「商品を作る前に、現場に足を運んでお客様に直接ニーズを聞く」「その企業が何に困っているのかを調査・分析する」という市場調査を徹底的に行い、その結果を商品開発に反映させているのです。

キーエンスのような徹底した市場調査を行わずに出した商品、サービスはすべて「仮説」だけをもとに作られています。つまり、売れるかどうかがまったくわからないのに作っているのです。

仮説レベルで開発・製造してしまうのは「見切り発車」と言っていいでしょう。見切り発車をすると、十中八九失敗します。日本企業の新事業・新商品の成功率が低いのは、この「仮説レベルで見切り発車してしまうこと」が原因の大半を占めると考えて間違いないでしょう。そして、この新事業の失敗が、会社全体の利益を激減させているのです。

新商品の企画・開発前に市場調査を徹底的に行い、商品開発に反映させること、ここを徹底することが、付加価値を生み出すための第一歩です。

田尻 望 株式会社カクシン 代表取締役 CEO

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たじり のぞむ / Nozomu Tajiri

京都市出身。大阪大学基礎工学部情報科学科卒業後、キーエンスでコンサルティングエンジニアとして重要顧客を担当。また販売促進技術、海外販売促進技術に従事。その後、研修会社の立ち上げに参画し、独立。社会変化に適応した企業の長期的発展を目指す。著書に『構造が成果を創る~価値を構築するストラクチャリング思考と手法』(中央経済社)、『付加価値のつくりかた 一番大切なのに誰も教えてくれなかった仕事の本質』(かんき出版)

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