日本語が上手な女将は病気で出勤してないということだが、来たことを告げると喜んでメッセージを送ってきた。「実はコロナにかかってしまったんです」と泣いている。女将さんはガンの闘病生活もしており、それにコロナはたいへんだろう。

「もうね、家とスーパーマーケットだけしか行ってなかったのに感染しちゃうなんて、なんてひどい国なの!」と怒っているが、女将さん、ここはあなたの国です……、といったメッセージをしばらくやり取りした後、スタジオに向かう。
出迎えてくれたのはドラムをレコーディングする歌手本人とエンジニアの2人。手にはアルコール噴霧器を持っていて、握手のたびに消毒したり、マスクを決して外さなかったり、とてもコロナを恐れているように見えて緊張した。ところが、理由はほかにあったことが後に判明する。
レコーディングは順調で、午後5時にはすべての作業を終えて「飲みに行こう」となった。歌手も一緒に行くのかと思ったら「帰る」というので、結局エンジニアと2人で飲むことに。場所は日本風の居酒屋だったのだが、そこでも陰性証明の提出は必要ではなくQRコードをスキャンして足跡を残すのみであった。
どっぷりと濃い濃厚接触者になる
前述の友人ご夫婦も招待しようと連絡したら、ショッキングな事実を伝えられた。私と一緒に飲むのを楽しみにして飲み屋に入れるように毎日PCR検査を受けて、結果が出ないので毎日毎日検査を受け続けていたのだが、先日出た結果が「陽性」。厳密には「1つの試験管で検査した10人の中に陽性者がいた」というもので、彼ら自身が陽性なのかどうかはわからない。
そもそも10人が1つの試験管で検査するなんて、まるで毎日ロシアンルーレットをやっているようなものである。せめてもの救いが、昔なら有無をいわさず収容所のような隔離施設に送られるのだが、今は緩和されて自宅で自主隔離となっているようだ。
エンジニアと盛り上がって飲んでいるときに、またショッキングな事実を聞いた。
「歌手が『一緒に飲めなくてすみません』と謝ってましたよ。実は彼も陽性で」
それって陽性なのにスタジオ来てたの? というより、一瞬でそこまで緩くなったということか……。そして彼自身も私にショッキングなことを言った。
「実は妻も陽性で家で寝てるんです」
ということは、今の私は陽性者と同居している男とマスクを外して酒を飲んでいるのか! あれほど厳格に行われていた中国のゼロコロナ政策が、一瞬のうちにここまで緩くなっているのが信じられなかった。
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