学者、文化人、そして経営者。世界と日本の知性は、未来をどう展望するのか。「2023年大予測」特集のインタビューシリーズから抜粋。
特集「2023大予測|スペシャルインタビュー」の他の記事を読む
ツイッターを中心とするSNS上の言論空間は、現実社会に多大な影響を与えるようになった。人々は大量の情報を浴びながらも多忙の中でじっくりと思考する時間を失っている。今後、言論空間や人々の思考はどうなっていくのか。東京大学大学院の國分功一郎教授に話を聞いた。
言い返せない世の中になっている
──ここ数年の私たちの行動や考え方の変化をどうみていますか。
コロナ禍で起こった行動や思考の変容がまったく新しいものだったかというと、違うように思う。それまでの社会にもジンワリとあった傾向が、パンデミックというきっかけを得て強力に加速した。
不要不急という言葉は他人との接触の回避を急激に推し進めた。これは例えば、健康を害するだけで生きていくために必ずしも要らないと見なされていたたばこ、酒、砂糖などの嗜好品が強く避けられつつあったことの延長線上で捉えることができる。
ある意見に対する社会の反応についても、同じことがいえる。メジャーな価値観に基づく正論によって、批判されうる意見がどこまでも排除される。その傾向が以前よりも強まった。例えば、以前は嗜好品を悪と捉える傾向に対して、多少の反発が可能だったが、「健康を何だと思っているんですか」と言われれば何も言い返せない世の中になってしまっている。
外食産業や夜の街がコロナ禍で窮地に追いやられたこととも関係するように思う。それらの業態は確かに「不要不急」だったかもしれない。しかしそこには、余計だからこそ生まれる豊かさや人を救う力があった。多様性を受け止めていたそれらは、コロナ禍で真っ先に切り捨てられた。
この記事は有料会員限定です。
東洋経済オンライン有料会員にご登録いただくと、有料会員限定記事を含むすべての記事と、『週刊東洋経済』電子版をお読みいただけます。
- 有料会員限定記事を含むすべての記事が読める
- 『週刊東洋経済』電子版の最新号とバックナンバーが読み放題
- 有料会員限定メールマガジンをお届け
- 各種イベント・セミナーご優待
無料会員登録はこちら
ログインはこちら