マスクが手に入れた「ツイッター」の恐ろしい問題 ハーバード大学法学者のレッシグ教授に聞く

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ローレンス・レッシング氏
ローレンス・レッシグ氏はインタビューの中で「イーロン・マスクが言論の自由について語るのを聞くと、困惑する」と述べた(撮影:尾形文繁)
巨大IT企業の寡占化は社会にどんな弊害をもたらし、それを変えるために何が必要なのか。 そして、ブロックチェーン技術による分散型インターネット「ウェブ3」は、現状を変える可能性があるのか。
アメリカの著名な法学者であるハーバード大学のローレンス・レッシグ氏に聞いた(インタビューは11月上旬に行った)。

――長年インターネットにおける秩序のあり方を考察してきた専門家として、GAFAMと呼ばれるビッグテックが大きな力を発揮している現状をどう受け止めていますか。

 まず既存のビッグテックは、アメリカ社会、そして世界中の社会に対して、巨大な問題を生み出している。グーグルやメタ(旧フェイスブック)が柱とする「広告」という単一の支配的なビジネスモデルが、(企業と消費者を結びつける)エンゲージメントベースのソーシャルメディアにつながり、それが私たちの心理を利用して、ますます社会的に破壊的な行動をとるように仕向けている。

そして今、政治的には二極化している。メタのような企業が人々を二極化させ、怒りを誘発するようなコンテンツを提供し、より多くの人々がそれに関与するようにしているからだ。このビジネスモデルは、社会に対して莫大なネットワーク外部性(=同じ財・サービスを消費する個人の数が増えれば増えるほど、そこから得られる便益が増加する現象)を持つことになる。

――そうした中、新たなデジタル経済圏であるウェブ3は、GAFAM中心のインターネットのあり方を変える可能性があると思いますか。

ウェブ3で参加する主体がより多様になることははっきりしており、こによって組織化やガバナンス、契約のコストを下げることになれば、GAFAMが独占する既存の技術インフラに対する大きな対抗軸になるだろう。

「ウェブ3」がネットの構造を大きく変える可能性

――それはどれくらいのスパンで変化が起きうると?

日本のイベントに登壇したローレンス・レッシング氏
11月4日に東京・渋谷で行われたデジタルガレージ主催のイベントに登壇したレッシグ氏。イベントでは基調講演やデジタルガレージ取締役の伊藤穰一氏との対談などを行った(記者撮影)

今後10年で根本的に異なるウェブやインターネットを見ることになるだろう。誰も確実な予測はできないが、私はウェブ3がその可能性を持つと信じている。

人々があまり直感的に理解できていないのは、ネットインフラを整備するうえでAI(人工知能)が非常に破壊的な役割を担っているということだ。GAFAMが得意とするエンゲージメントベースのビジネスモデルにおいてAIが原動力となっている。

ただ(分散型の)ウェブ3のインフラがAIの開発をよりよい方向に向かわせ、企業と消費者の関係が改善すれば、インターネットは今よりずっと健全なものになると思います。

――一方、イーロン・マスク氏がツイッターを440億ドルで買収し、コンテンツモデレーションやAI倫理などの部門を含めて大規模なレイオフを行いました。彼はツイッターにおける言論空間をうまく管理できるのでしょうか。

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