既存の業界秩序を一変させることが期待される「ウェブ3」。政府の支援にも力が入るが、その方向性は定まっていない。
打倒GAFAM(グーグル、アップル、フェイスブック〈現メタ〉、アマゾン、マイクロソフト)の切り札となるのか――。ブロックチェーン(分散型台帳)の仕組みを使った分散型ネットワーク「Web3(ウェブスリー)」のビジネス創出に向けて、日本政府が本格的な支援に乗り出している。
岸田文雄首相は5月5日にイギリスのロンドン・シティで行った講演で、「ブロックチェーンや、NFT(非代替性トークン)、メタバースなど、ウェブ3.0の推進のための環境整備を含め、新たなサービスが生まれやすい社会を実現する」と宣言した。
6月7日に発表された内閣官房の「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」や、デジタル庁がとりまとめ同日に閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた重点計画」においても、ウェブ3推進に関する文言が並んでいる。
ウェブ3はGAFAMのような巨大プラットフォーマーに頼らない、新たなデジタル経済圏として期待されている。日本のインターネット産業はGAFAMの後塵を拝しており、日本政府には今度こそ主導権を握りたいという思惑がある。
400億ドル以上の時価総額はほぼゼロに
ところがウェブ3で先を行くアメリカでは、すでに関連企業が退場を迫られる事例も多発している。いったい、何が起きているのか。
失われた時価総額は400億ドル(約5兆円)――。5月上旬、暗号資産「テラUSD」やその姉妹通貨「ルナ」の価格が暴落し、暗号資産(仮想通貨)投資家の間に衝撃が走った。
テラUSDはステーブルコインと呼ばれる法定通貨と連動する仮想通貨の一種で、米ドルと連動している。価格の乱高下が大きい仮想通貨の代替手段として普及しているステーブルコインは、NFTの売買などを行うウェブ3の世界で欠かせないツールだ。
1テラUSDは1ドルとペッグ(連動)されており、その連動が崩れた場合、ルナが準備通貨としてアルゴリズムを基に需給を調整し、1対1の価値安定を図るとされていた。
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