今、NFTに携わる人の中で「RTFKT」の名を知らぬ人はいないはず。共同創業者の1人にインタビューした。
世界のファッションブランドの間では今、「デジタルファッション」が注目を集めている。例えばオンラインゲームなどの仮想空間で自分のアバターに着せる服や靴があり、「スキン」とも呼ばれている。要は、着せ替えアイテムだ。
人気ゲーム「フォートナイト」を手掛けるアメリカのゲーム大手エピック・ゲームズは2021年、スペインの高級ブランド・バレンシアガと提携し、ゲーム内のスキンや実際のアパレルを共同企画したことが話題を呼んだ。
そこに出現したのが「NFT(非代替性トークン)」だ。NFTは、ブロックチェーン上で画像や動画などのデジタルデータが唯一無二のものと示す証明書の役割を果たす。デジタルの限定品を作成することができ、価値をつけることを可能にした。誰でもデジタルのアパレルを取引できるようになった。
どんなブランドよりもイノベーションを起こしている
NFTの可能性にいち早く目をつけたのが、アメリカの大手スポーツブランド、ナイキだ。
ナイキは2021年12月、デジタルスニーカーのNFTなどを手掛けるベンチャー企業、RTFKT(アーティファクト)を買収(金額は非公開)。世界的な大手企業によるNFTベンチャーの買収は、ファッションやゲームなどさまざまな業界を驚かせた。
今、NFTに携わる人の中で「RTFKT」の名を知らぬ人はいないだろう。そして今回、RTFKT共同創業者のブノワ・パゴット氏が、ナイキの買収後初めて日本のメディアの取材に応じ、東洋経済による独占インタビューが実現した。
RTFKTはeスポーツチームのマーケター、ゲームスキンの3Dデザイナー、スニーカー職人という3人が2020年初めに創業。スニーカーのNFTと、それを再現した実物のスニーカーをセットにして販売し、人気を得た。
パゴット氏は「今僕らは世界のどんなブランドよりもイノベーションを起こしている自負がある」と話す。この4月からはナイキとの協業も始まった(詳細は下記のインタビュー内で)。
創業の経緯から瞬く間に爆発的な人気を得た理由、ナイキによる買収に至った背景、そして今後の展開まで、事業のすべてを聞いた。
――RTFKTの共同創業者たちはそれぞれまったく別のバックグラウンドを歩んでいました。そもそもどのようにして出会ったのでしょう。
僕は高級ブランドのマーケティングを経て、RTFKT創業前まで「FNATIC(ファナティック)」というヨーロッパのeスポーツチームでマーケティング責任者をしていた。
チームメンバーが『カウンター・ストライク』(複数プレイヤーが組むシューティングゲーム)の中で身につけるスキンを企画していたとき、スキンデザイナーとして名を馳せていたもう1人の創業者であるクリス・リーに出会った。これが2018年頃だった。
当時、大金を稼いでいたeスポーツプレイヤーたちがファッションのインフルエンサーになり始めていた。ゲーマーはオタクっぽくて、ファッションを知らないというイメージを壊した。
シュプリームやオフホワイト、ルイヴィトン、グッチのスニーカーを買い、ライブ配信でパソコンの隣に置いて見せるなどしていた。そうした姿を目の当たりにして「ゲーム文化とストリート文化の融合」を感じた。
――そこでスニーカーに注目したわけですね。
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