「スタートアップ創出元年」をうたい、リスクマネーの供給を増やすべく躍起になる岸田政権。一連の政策は”プロの目”にどう映るのか。
日本が7800億円なのに対し、アメリカは36兆円――。これはそれぞれの国における2021年のスタートアップ資金調達総額だ。岸田政権が「スタートアップ創出元年」をうたう中、この差をどう埋めるか。その手段の1つが、投資マネーを増やすことだ。
スタートアップ投資を主に担うのがベンチャーキャピタル(VC)だ。7月に入り、独立系VCの新ファンドが続々と出てきている。グロービス・キャピタル・パートナーズは過去最大となる500億円の7号ファンドを、ANRIは400億円規模を目指す5号ファンドを設立したと発表した。
これらVCの主要な出資者が、機関投資家だ。公的年金や企業年金、生命保険、大学の基金などで、従来は株や債券に投資してきたが、近年はそれらに替わる「オルタナティブ投資」の先としてVCやプライベートエクイティ(PE)ファンドに注目するようになった。
長期運用資金をスタートアップ投資に
機関投資家は直接VCに投資するのではなく、「ゲートキーパー」と呼ばれる資産運用会社に委託することが多い。
国内ゲートキーパーの大手であるエー・アイ・キャピタルは、投資する国内VCの数が業界で最も多い。これまで10社以上の独立系VCに出資しているという。VCへの投資以外も含むが、機関投資家からの運用委託総額は73億ドル(約1兆円)、運用の助言や管理のみを行う案件を合わせると、運用総額は133億ドル(約1兆8000億円)に上る。
エー・アイ・キャピタルの名が広く知られたのは2022年1月。きっかけは、公的年金の積立金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が日本に特化した未上場株投資を開始し、それに助言するゲートキーパーとして同社が選出されたことだ。
GPIFは3月末時点で約196兆円の運用資産を抱える世界最大級の機関投資家で、ついにVCへの投資を始めるとして注目が集まった。
岸田政権は政府の出資で海外VCを日本に誘致したり、国内VCへの投資を増やしたりする政策を掲げる。さらにGPIFをはじめとする長期運用資金をスタートアップ投資に循環させることも狙う。
だが、海外VCへの出資効果などには業界内での疑問の声も多い。一連の政策は”プロの目”にどう映るのか。エー・アイ・キャピタルのCIO(最高投資責任者)を務める佐村礼二郎社長に話を聞いた。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら