ベンチャー振興の目玉「政府調達」に託す起死回生 省庁・業界が猛プッシュ、一部で「癒着」の懸念も

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岸田政権の肝煎りで2022年末に「スタートアップ5カ年計画」が策定される。官民の攻防を追った。

自民党スタートアップ推進議連が東京・渋谷で開催したピッチイベント(2019年11月)。岸田内閣が誕生してから、スタートアップと政治の距離はさらに縮まっている(写真:フォースタートアップス)

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「戦後の創業期に次ぐ日本の第2創業期を実現するため、本年をスタートアップ創出元年にする」――。岸田文雄首相は2022年1月4日の年頭記者会見でこう語った。

背景には、政府としての危機感がある。日本では上場企業に占める戦後(1945~1954年)に設立された企業の数が最も多く、ユニコーン(時価総額10億ドル超の未上場企業)と呼ばれる、次世代の経済成長を担うスタートアップが米中などに比べ極端に少ないのだ。

岸田首相によるこの日の宣言を機に、政府のスタートアップ支援は急速に動き始めている。

スペースXやモデルナはなぜ急成長した?

「今日中にリストを送ってもらえないだろうか。至急、上に持って行かないといけないんだ」

3月中旬のある夜、日本ベンチャーキャピタル協会(JVCA)代表理事(会長)でインキュベイトファンド代表パートナーの赤浦徹氏は、自宅に戻った直後、そんな電話を受けた。スタートアップ領域を担当する経済産業省幹部からだった。

リストとは、政府や地方自治体が民間の物品やサービスを購入する「政府調達」を受注することで、成長の見込めるスタートアップの一覧を指す。

日本では官公需の調達に占める創業10年未満の企業との契約は1%を切っているうえ、その比率は年々低下傾向にある。政府が大手企業とばかり契約している現状は、必ずしもスタートアップフレンドリーとは言えない。

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