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作家・逢坂冬馬が語る「戦争の現実」の向き合い方 戦争終結には我々が言葉を発していくしかない

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学者、文化人、そして経営者。世界と日本の知性は、未来をどう展望するのか。「2023年大予測」特集のインタビューシリーズから抜粋。

作家 逢坂冬馬氏
『同志少女よ、敵を撃て』の作家・逢坂冬馬さんは、ウクライナ戦争が勃発した世界をどう見ているのか (撮影:今井康一)

特集「2023大予測|スペシャルインタビュー」の他の記事を読む

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ロシアによるウクライナ侵攻以降、話題を集めている長編小説がある。逢坂冬馬さんの『同志少女よ、敵を撃て』だ。

この小説では第2次世界大戦の独ソ戦を舞台にソ連軍の女性狙撃兵となった少女の苦しみや悲しみを描く。ウクライナ侵攻で世界が目撃した悲惨な現実と重なり合う物語でもある。全国の書店員が選ぶ「2022年本屋大賞」の大賞を受賞。直木賞候補にもなった。逢坂さんはこの現実をどう見ているのだろうか。

暴力から逃れられない現実がある

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──『同志少女よ、敵を撃て』を書いた理由を教えてください。

もちろん、戦争そのものは嫌悪する。自分がいかに戦争を嫌っているか。その思想で貫かれているのがこの小説だ。暴力は否定されるべきもので、遭遇したくないものだが、暴力から逃れられない現実もある。だからこそ、テーマにする意味もあった。

独ソ戦の中の女性狙撃兵を描くことはずっと考えていた。歴史上類を見ない存在であるのに、あまり語られていない。しかし、資料を集めて、考証をしっかりしてからでないと、うかつに手を出せない題材でもある。頭の中で棚に載せたままのような状態だった。

転機は2015年にスヴェトラーナ・アレクシエーヴィチがノーベル文学賞を受賞したことだ。日本でも彼女の『戦争は女の顔をしていない』が2回目の出版を迎えた。その本が独ソ戦を小説にする際の基礎になった。このオーラルヒストリー(口述史)的な小説を読んで、個人の戦争体験でなければ語りえない戦争の姿を小説で描くことができないかと思った。

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