学者、文化人、そして経営者。世界と日本の知性は、未来をどう展望するのか。「2023年大予測」特集のインタビューシリーズから抜粋。
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世界的なインフレの影響と円安により、日本でもついに物価上昇が始まった。コロナ禍初期には予想されなかった変化が各国で起こっている。日本経済は今後どうなるのか。『物価とは何か』『世界インフレの謎』などの著書がある、東京大学大学院の渡辺努教授に話を聞いた。
戦争が終わっても日本の物価は戻らない
──ウクライナ侵攻がインフレの原因だという見方があります。
非常にわかりやすいが、違うと思う。戦争が始まったのは2022年2月。米英欧のインフレは2021年4月には起こっていた。明らかに戦争とは関係ない。
確かに、日本の物価上昇が加速し消費者が物価高を実感するようになったのは開戦後かもしれない。だが、海外発のインフレがたまたまそのタイミングで日本に入ってきた、というのが大きな構図。戦争の影響も少しはあるかもしれないが、ほとんどはほかの要因によるものだろう。和平交渉がうまくいき戦争が終わっても、日本の物価は元には戻らない。
では、なぜ海外でインフレが起きたのか。大きいのは、パンデミックによる供給の減少だ。需要に比べて供給が少なくなれば、当然、モノの値段は上がっていく。
──各国で大盤振る舞いされた給付金がカネ余りにつながりインフレを起こしたともいわれます。
欧米のコロナ給付金が需要の増加要因かどうかは、実はよくわかっていない。マネーサプライの増加がインフレを招いたのかというとおそらく違う、と私を含め多くの研究者が考えている。
もう1つ、各国の積極的な財政支出による債務の急増がインフレの原因ではないかという見方もある。研究者の間では、こちらは可能性がありそうだと考えられている。
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