有料会員限定

日本人の「値上げ嫌い」に変化、その先に待つ試練 東京大学・渡辺努氏「賃上げ5%は実現できる」

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3 ✎ 4 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

有料会員限定記事の印刷ページの表示は、有料会員登録が必要です。

はこちら

はこちら

縮小

学者、文化人、そして経営者。世界と日本の知性は、未来をどう展望するのか。「2023年大予測」特集のインタビューシリーズから抜粋。

東京大学大学院教授 渡辺努氏
「戦争が終わっても、日本の物価は元には戻らない」と断言する理由とは?(撮影:尾形文繁)

特集「2023大予測|スペシャルインタビュー」の他の記事を読む

ウクライナ、気候変動、インフレ……。混迷を極める世界はどこへ向かうのか。12月19日発売の『週刊東洋経済』12月24-31日号では「2023年大予測」を特集(アマゾンでの購入はこちら)。世界と日本の政治・経済から、産業・業界、スポーツ・エンタメまで108のテーマについて、今後の展開とベスト・ワーストシナリオを徹底解説する。この記事は本特集内にも収録しています。

世界的なインフレの影響と円安により、日本でもついに物価上昇が始まった。コロナ禍初期には予想されなかった変化が各国で起こっている。日本経済は今後どうなるのか。『物価とは何か』『世界インフレの謎』などの著書がある、東京大学大学院の渡辺努教授に話を聞いた。

戦争が終わっても日本の物価は戻らない

週刊東洋経済 2022年12/24-12/31【新春合併特大号】(2023年大予測 108のテーマで混沌の時代を完全解明!)
『週刊東洋経済 2022年12/24-12/31【新春合併特大号】(2023年大予測 108のテーマで混沌の時代を完全解明!)』(東洋経済新報社)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

──ウクライナ侵攻がインフレの原因だという見方があります。

非常にわかりやすいが、違うと思う。戦争が始まったのは2022年2月。米英欧のインフレは2021年4月には起こっていた。明らかに戦争とは関係ない。

確かに、日本の物価上昇が加速し消費者が物価高を実感するようになったのは開戦後かもしれない。だが、海外発のインフレがたまたまそのタイミングで日本に入ってきた、というのが大きな構図。戦争の影響も少しはあるかもしれないが、ほとんどはほかの要因によるものだろう。和平交渉がうまくいき戦争が終わっても、日本の物価は元には戻らない。

では、なぜ海外でインフレが起きたのか。大きいのは、パンデミックによる供給の減少だ。需要に比べて供給が少なくなれば、当然、モノの値段は上がっていく。

──各国で大盤振る舞いされた給付金がカネ余りにつながりインフレを起こしたともいわれます。

欧米のコロナ給付金が需要の増加要因かどうかは、実はよくわかっていない。マネーサプライの増加がインフレを招いたのかというとおそらく違う、と私を含め多くの研究者が考えている。

もう1つ、各国の積極的な財政支出による債務の急増がインフレの原因ではないかという見方もある。研究者の間では、こちらは可能性がありそうだと考えられている。

次ページなぜインフレを予想できなかったのか
関連記事
トピックボードAD