誤解多い「日本の生産性」物価高の今、やるべきこと 日本に欠けている「ポスト・コロナの構想力」

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新聞の「物価高」の見出し
インフレと生産性の関係について解説します(写真:Ystudio/PIXTA)
日本の経済成長を議論するうえで、「生産性の低さ」は大きな課題となっている。労働生産性を見ると、主要先進7カ国(G7)で最も低く、OECDでも23位にとどまる。
ただ、生産性に対する誤解は少なくない。「生産性が低い」と感じる人がいる一方で、「こんなに一生懸命働いていて、もうこれ以上働けないくらいなのに、生産性が低いといわれても……」と思う人もいる。
はたして生産性とは何なのか、生産性を向上させるためにはどうすればいいのか。生産性の謎を解く連載の第6回は、「生産性とインフレの関係」について、学習院大学経済学部教授の宮川努氏が解説する。

デフレだった日本にとって喜ばしい事態?

新型コロナウイルスの感染は、依然多数の感染者数を出しているものの、世界的にも死者数の増加傾向が止まり、欧米諸国を中心に行動制限をほとんど解除していることから、峠を越えた感がある。しかしながら、この感染拡大を乗り越えた先に見えてきた経済の姿は、感染拡大前とは異なった様相を見せている。

新型コロナウイルスが発生する前の2010年代は、多くの先進諸国がリーマン・ショック後の長期停滞に苦しんでいた。ローレンス・サマーズ・ハーバード大学教授が使った「secular stagnation」という言葉自体が、1930年代の不況時を表す用語からの借り物であった。

需要不足に伴うデフレにより、日本を含む中央銀行は金利をゼロまたはマイナスにまで低下させ、景気拡大に躍起となっていた。しかしコロナからの感染明けまたはウィズコロナの世界は、一転インフレに悩まされる世界となった。

これは喜ばしい事態ではないのか。とくに日本では20年近くにわたりデフレに悩まされ、インフレの到来を心待ちにしていたのではないのだろうか。アメリカでは昨年から5%を超えるインフレが続いているが、日本の場合は目標としていた2%のインフレ率を超えたのはまだ7カ月程度である。

しかし現在こうした楽観的な見方は少ない。なぜだろうか。

最も大きな要因は、2010年代に期待されたインフレと今回のインフレは、その要因が異なるからである。

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