海を渡るiPhone、知られざる中古市場の実態 販売店が買い取る大量のスマホはどこへ?
業者もうらやむオークションだが、入札を知る業者によれば、「仕入れた端末は海外で販売すること」が参加条件となっている。これは国内における新機種販売への影響を避けるためだろう。オークションの対象端末は香港の倉庫に保管されているという。
実は業者の間では、この香港こそが、中古スマホが流通する世界最大の市場だ。アジアの取引拠点にはシンガポールもあり、中東やアフリカの中継地点といわれるドバイ、北米からの南米市場への入り口とされる米国東南部のフロリダ州マイアミなど、世界各地の拠点を通じて、中古端末が駆け巡っている。
各国から業者が足を運ぶ香港市場では、複数の取引所で月間100万~200万台の取引があるとされる。現地で取引を行っている業者は、「われわれが知るのは4~5カ所。全体像はわからない。ある意味カオスだ」と表現する。日本で新品を扱う販売店の関係者も、「香港の取引にはリスクが多い。特に、中古端末の品質を見極めるのが難しい」と語る。
香港市場で起きた”事件”
2014年秋、香港市場でちょっとした“事件”が起きた。それまで1台250ドル程度で取引されていた「iPhone5s」の取引価格が一気に50ドルほど下落したのだ。原因の一つとして中古業者から指摘されるのが、日本市場で繰り広げられた熾烈な下取り合戦の余波である。
14年9月の「iPhone6」発売時、最大手のドコモは勝負に打って出た。
他社から乗り換えるユーザーの獲得を狙い、旧機種の「5s」を最大4万3200円で下取りする(=新機種の値引きに充当)、とブチ上げた。買い取り条件は異なるものの、他社では2万円台だったため、ドコモは破格の設定だった。
競合幹部からは「余計なことをしてくれた」と愚痴も漏れたが、KDDI、ソフトバンクとも下取り価格を引き上げて追随した。
3社がそろって下取りを強化したことで、結果的に大量のiPhoneが香港市場に流れ込んだとみられる。同じ時期、米国からの中古端末の流入が増えたことで需給がさらに緩み、価格の下落に拍車がかかったという見方もある。
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