海を渡るiPhone、知られざる中古市場の実態 販売店が買い取る大量のスマホはどこへ?
コーエン氏によれば、東南アジアなどの新興国では、インターネットに接続する手段として、パソコンでなく、中古スマホが利用されている。南米やアフリカでは2~3年前に発売された端末の需要が伸びているという。最低限の機能が使えて、価格が安いため、引き合いは強い。
欧米や日本では「通信事業者が新製品を安く提供してユーザーの買い替えサイクルを早めており、下取りも重要なキャンペーンとして活用される」(コーエン氏)。こうして買い取られた端末が中古品として新興国市場へと流れているのだから、先進国マーケットは中古端末の“供給源”となっている。
日本の中古市場に熱視線
米調査会社のガートナーも、ブライトスターの見立てと同じだ。今年2月に発表した調査で、成熟市場のユーザーが18~20カ月ごとに新製品に乗り換えていることなどを挙げており、世界の中古スマホ市場が17年には、14年に比べて倍増の1.2億台になると予想している。
中古市場の広がりは、新製品を投入しているメーカーにも追い風になりうる。アップルは米グーグルのアンドロイド端末のように廉価版を扱っていないが、中古ならば新品を購入できないユーザーにも手が届く。実質的なエントリーモデルが中古市場で出回ることによって、アップルブランドのファン作りにもつながる。新興国の所得水準がさらに高まれば、いずれは新品を購入することも考えられ、中古ユーザーの拡大は潜在的な顧客ともいえるだろう。
一方、中古品の流通が多くない日本でも、業者の間からは、「海外の中古事業者が虎視眈々と日本への進出を狙っている」という話も聞かれる。
注目が集まる背景にあるのが、MVNO(仮想移動体通信事業者)の広がりだ。ドコモなど大手から通信インフラを借りてサービスを提供するMVNOは、設備負担を抑制できるため、料金の安さを武器に契約数を伸ばしている。MVNOのサービスが広がれば、中古端末との「安価な組み合わせ」がさらに広がることも考えられる。
現在は、携帯大手の下取りが幅を利かせており、中古スマホは国内から海外への“一方通行”。だが、高価な端末と大手が取りそろえた料金体系だけが、サービスのすべてではない──。そうした認識がユーザーに広がれば、日本の中古流通のあり方が大きく変わる可能性もある。
(3月24日は続編「ブックオフが中古スマホを買う理由」を掲載します)
(「週刊東洋経済」2015年3月28日号<23日発売>「核心リポート01」を転載)
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