野球選手を沖縄から「遠隔スカウト」の凄い仕組み 未来を志向するジャパンウィンターリーグ

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今回集まったのは10月のNPBのドラフト会議で選に漏れた選手ではあるが、それでもトヨタ自動車、Honda、東京ガス、パナソニックなど社会人野球が来年以降に期待をかける若手を「出張扱い」で派遣した。関係者は「予想以上の好素材が集まった」と目を見張った。

このリーグのデータ部門を担当するアナリストの星川太輔氏は次のように語る。

「『こういうことできたらいいよね』を全部やってみようという感じです。結果としてのパフォーマンス、プロセスとしてのフィジカルも継続してデータを取って、このリーグを通じて何がどう成長したかも世に出していこうと思っています。

プロ野球でもできなかったデータ配信をやろうと思っています。結果として、今までチャンスをもらえなかった選手に日が当たれば意義がある。NPBにとっても、どんなデータが有用なのかが見えてくるでしょう。そういう意味では従来のトライアウトとはコンセプトが違いますね」

加治佐平氏(写真:筆者撮影)

東洋大学学際・融合科学研究科准教授の加治佐平氏は、東京大学野球部出身。バイオサイエンスの専門家だが、自身でもワールドトライアウトを主宰した野球人でもある。

「私がやっていたワールドトライアウトとコンセプトが近かったので、協力しています。アスリートに役立つバイタルデータを解析できるシステムを開発しています。この大会では、血糖値の推移を見るセンサーを選手に装着して、選手の運動やアドレナリンとの関係をモニターしています。これまでにないデータが取れるのではないでしょうか」

参加費35万円で得られるもの

このジャパンウィンターリーグは、フル参加で35万円、半期参加でも24万円(沖縄県在住者は安くなる)。決して手軽に参加できる費用ではない。社会人の選手は出張扱いだが、それ以外は親に出してもらったり、貯金を取り崩したり、工面をしている選手も多い。

しかしこのリーグは前述したとおり、選手たちのパーソナルデータやパフォーマンスをNPB、独立リーグ、MLB、アメリカ独立リーグ、台湾プロ野球(CPBL)などの関係者に配信している。選手たちは沖縄に居ながらにして自身を売り込むことができる。宿舎はアトムホームスタジアム宜野湾に隣接するラグナガーデンホテル。食事も提供される。

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