人類が激変させた地球環境と破滅を逃れる「方策」 アッテンボローが語る持続可能な生活への指針

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しかしこのコンパスには重要な要素が1つ欠けている。最新の調査によると、生物界への人間活動の影響のおよそ50%は、世界で最も裕福な16%の人々によってもたらされているという。それらの最富裕層の生活の仕方は、明らかに持続可能ではない。持続可能な未来への道筋を描くときには、この問題にも対処する必要がある。

わたしたちは地球の限りある資源を使い果たさない生き方をめざすだけでなく、その資源をできるだけ公平に分かち合うことも考えなくてはならない。

ケイト・ラワースの「ドーナツ・モデル」

この課題を明確にするため、地球の限界モデルに内側の輪をつけ加えたのが、オックスフォード大学の経済学者ケイト・ラワースだ。

新しい内側の輪には、人間らしい生活を送るために最低限必要なことが記されている。良質な住居、医療、浄水、安全な食べ物、エネルギーへのアクセス、質の高い教育、所得、政治的発言力、正義だ。

したがってこれは2組の限界が備わったコンパスになっている。外側の輪は環境的な上限であり、それを超えると、地球の安定と安全が保てない。内側の輪は社会的な土台であり、公正な社会の実現のためには、地球上のすべての人をその上に引き上げられるよう努めなくてはならない。

「ドーナツ・モデル」と名づけられたこのモデルは、すべての人に安全で公正な未来をもたらすという魅惑的なビジョンを提示している。

「あらゆるものに持続可能性を」がこれからの人類が掲げるべき理念であり、ドーナツ・モデルがわたしたちが未来に向けて携えていくべきコンパスになる。

ドーナツ・モデルに示されているわたしたちの課題はいたって単純だが、たやすくはない。それは世界じゅうの人々の生活を向上させ、なおかつ地球への影響を大幅に減らすという課題だ。

この難問に取り組むうえで、わたしたちは何から知恵を得たらいいのか。それには生物界そのものに目を向ければいい。そこにすべての答えがある。

(翻訳:黒輪篤嗣)

デイヴィッド・アッテンボロー 自然史ドキュメンタリー制作者

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David Attenborough

英国を代表する自然史ドキュメンタリーの制作者。BBCの画期的なシリーズを世に送り出し、世界的な自然史ドキュメンタリーの作り手として確固たる名声を博した。代表作に《地球の生きものたち(Life on Earth)》(1979年)、《ライフ・オブ・バーズ/鳥の世界(The Life of Birds)》(1998年)、《ブルー・プラネット(The Blue Planet)》(2001年)、《アッテンボローのほ乳類 大自然の物語(The Life of Mammals)》(2002年)、《プラネットアース(Planet Earth)》(2006年)などがある。

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