「コテコテ、ネバネバで、膠(にかわ)のように、非常に粘度が高いのが特徴。内視鏡で鼻の奥を見ると、一目瞭然です」
もう一つ、好酸球性副鼻腔炎では、においがわからないという症状を訴える患者が多い。「『まったくわからない』と言う人も少なくありません。嗅覚障害は徐々にではなく、副鼻腔炎の症状が出てから、急速に起こりやすい」という。
好酸球性副鼻腔炎という病気の存在が知られるようになったのは、20年ほど前だ。それまでは、慢性副鼻腔炎としてひとくくりにされていた。
きっかけは「マクロライド系抗菌薬の少量長期投与療法(少量の抗菌薬を毎日、ある程度の期間、服用し続ける治療)」の登場だ。多くの患者がこの治療でよくなるのに対し、治療にまったく反応しない患者が一定数、存在することがわかり、なぜ効かないのかを解明する研究が進んだ。
「結果、このタイプの患者さんの鼻茸には好酸球という炎症細胞が多数、集まっていることがわかったのです。欧米を中心に研究が進み、日本でも一般的な慢性副鼻腔炎とは違うということで、新しく病名がつけられました」(寺田さん)
気づかないまま我慢している人も
20年以上前に慢性副鼻腔炎といわれた人のなかに、好酸球性副鼻腔炎の人が一定数いたことは間違いない。「現在もこの病気と気づかないまま、不快な症状を我慢されている潜在的な好酸球性副鼻腔炎の患者さんは相当いるのではないかと考えています」と寺田さんは危惧する。
好酸球性副鼻腔炎の患者には、なりやすい要因がある。
「成人になってから気管支喘息を発症した」「アスピリンなどの解熱薬で喘息やショックを起こしたりする『アスピリン不耐症』がある」「薬物アレルギーがある」などだ。
発症はほとんどが20歳以上の成人で、15歳以下の子どもには少ない。男性のほうが女性よりも多く、患者の平均年齢は50~55歳だという。
「気管支喘息でも、気道の炎症物質から好酸球が多く見つかっている。好酸球性副鼻腔炎はどうやら、鼻だけでなく、全身性の病気ということなのです。ただし、好酸球が副鼻腔炎の炎症にどう関与しているのかなど、詳しいことは、現在、研究中です」
一方、治療については、一筋の光が見えてきた。
これまでは、好酸球性副鼻腔炎の患者には抗菌薬が効きにくいため、内視鏡手術によって鼻茸を除去したり、副鼻腔内をきれいに洗浄する方法が行われてきた。手術の方法は前編で紹介したものと基本的には同じだ。
(関連記事:【鼻づまり】長引くグズグズ「副鼻腔炎」が原因?)
ただし、指定難病になるような中等症や重症の患者では、手術をしても再び、鼻茸が出てくることが多い。このため、手術を繰り返すか、炎症を抑えるステロイド薬の内服薬を使うしか方法がなかった。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら