不眠で悩む人の多くが訴えるのが「寝つきが悪い」ことでしょう。ところが猫は、寝床に丸まって目をつぶった瞬間に寝落ちしています。
私はこの寝落ちの様子を、またド真剣に観察してみました。その結果、わかったことがあります。
【眠りの達人ポイント③】「身体の感覚のスイッチ」を1つずつ切っていく
それは、猫は寝るときに「『身体の感覚のスイッチ』を1つずつ切っている」のではないかということ。
つまり、四肢の指先、ヒゲ(触覚)、耳(聴覚)、シッポと、その日によって順番は異なるけれども、体のパーツを次々と弛緩させているのです。
その過程は必ずしもじっとしているわけではなく、頭を動かしてみたり、寝ながら伸びをしたり、前脚で「いないいないばぁ」のように顔を隠してみたりなんかもします。
これは私たち人間にも、ものすごく有効だと思います。
布団に入ったら両足、両腕、お尻、腰、おなか、腕、胸、首、頭と、「身体の各部位の力」を、どういう順番でもいいので意識的に抜いていくのです。すべての力が抜けると、布団に体が沈んでトローンとしてきます。
5秒で寝落ちする「猫的思考法」を身につける
猫は寝るときに、余計なことは考えません。
「猫だから当たり前じゃないか」って?
いえいえ、猫だって「眠いけど、やっぱおなか空いたかも」とか、「今日はカッコよく塀に飛び乗ったつもりが失敗して悔しい」とか、今日のあれこれが脳裏に浮かびます。でも、とりあえず、寝る前に反省はしません。
猫はたぶん「記憶の消しゴム」を持っていて、都合の悪いことは全部消してしまうのでしょう。
「まっ、いっか」
「明日の心配は明日しよう」
「明日はきっと今日よりごはんがおいしいはず……」
「不愉快なこと」はどんどん記憶から消して、「都合のいいことだけ」を考えているうちに、いつの間にか夢の世界へ――という具合です。なんと無駄のない思考法でしょうか。
そして起きたときにはもう、今日のごはんや快適な場所を探して活動し始めるのです。これこそ「快眠の極意」かもしれません。
いかがでしたか?
猫はああ見えて「寝ること」に対して、ものすごく真剣に対峙し、常に、より気持ちのいい寝床を貪欲に追求しています。
私たちも猫にならって、気持ちよく、とろ~りとろける快眠を手に入れましょう。
「猫を40年観察した写真家」が発見した"熟睡"のコツ
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動くと揺れるところが面白くて、気に入っている
(香港・ランタオ島にて/写真:新美敬子)
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パリッと乾いたシーツの上でゴロンゴロン
(埼玉県さいたま市にて/写真:新美敬子)
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静かな早朝のオープン・カフェのテーブルは気持ちいい
(マルタ・ヴァレッタにて/写真:新美敬子)
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昼寝の前に、何もかも忘れられる得意技のルーティーン
(栃木県足利市にて/写真:新美敬子)
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仕事中の飼い主に飛び乗り、瞬時に眠ってしまった
(埼玉県さいたま市にて/写真:新美敬子)
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心地よさを追求したそれぞれの体勢で寝ていた三姉妹
(マルタ・メリーハにて/写真:新美敬子)
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レマン湖からのそよ風を感じられる塀の上にいつもいる
(フランス・ネルニエにて/写真:新美敬子)
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日差しが強いので日陰に入って反射光で日光浴
(ギリシャ・ロドス島にて/写真:新美敬子)
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蒸し暑い季節の昼下がりは、なかなか熟睡できない
(マレーシア・ペナン島にて/写真:新美敬子)
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建設中のビルの側溝にはまってみたら、冷たくて快適だった
(マレーシア・ペナン島にて/写真:新美敬子)
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窮屈な箱も好きだけど、長細い箱はもっと好き
(東京都・豊島区にて/写真:新美敬子)
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硬い抱き枕に左腕をあずけているような珍しい寝方の猫
(マルタ・ヴァレッタにて/写真:新美敬子)
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路地に日があたる時間を知っているので、お気楽にごろ寝
(香港・ランタオ島にて/写真:新美敬子)
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プランターの幅と硬さが、体をあずけるのにちょうどいい
(ギリシャ・ロドス島にて/写真:新美敬子)
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草の上は柔らかくて、時々虫がいたりするからお気に入り
(ラトビア・ユールマラにて/写真:新美敬子)
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なんとなくゴロンゴロンしていたら、眠ってしまった
(ラトビア・ユールマラにて/写真:新美敬子)
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にいみ けいこ / Keiko Niimi
愛知県豊橋市生まれ。郵便局勤務を経て、テレビ番組制作の仕事に就き、海外の猫を撮りはじめる。その後「犬猫写真家」を名乗り、写真家として活動する。世界各地を旅して街角で出会う犬や猫と人々との暮らしを撮影。訪れた国は70カ国を超える。「猫びより」などの雑誌や写真集でエッセイとともに紹介している。代表作『旅猫』(講談社・フォトルピナス)をはじめ、『マルタの猫』『すて猫カテキン』『猫の旅 地中海』『世界の看板にゃんこ』(すべて河出書房新社)、『猫のハローワーク』『猫のハローワーク2』(講談社文庫)など、著作は60作を超える。近刊は『世界のまどねこ』(講談社文庫)。
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