エンゼルス番記者が見た「大谷翔平」の凄みと今後 大谷のような二刀流選手の出現はあと100年必要

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2021年以降の2シーズンに大谷が残した偉業は周知の通りだ。技術面でも大きな修正が見られた。投手としての一例を挙げると、カットボールの利用だ。カットボールの握り方は、伝統的なフォーシームやツーシームの握りとは少し違っていて、横の揺れ幅が大きくなる。

大谷は日本でカットボールを投げていたが、メジャー入りした2018年と2試合だけ登板した2020年には一切投じていなかった。2021年4月に実験的に少し投げるようになり、5月までにはもはや欠かすことのできない武器となっていた。

大谷は投球のうちの20~30%、カットボールを投じるようになった。普通、カットボールは弱い打球を打たせるのが目的で、少ない球数でアウトを取るのに非常に有効なわけだが、うまく使えれば三振を奪うために必要な球数を節約することができる。

二刀流選手として、大谷は体力温存という課題と直面していたわけだが、カットボールのおかげでだいぶその点が改善されてきた。全力で速球を投げたり、変化球を多用したりして、腕に負担をかけなくてもよくなったのだ。投球の効率が上がることにより、毎回時速160キロの速球を全力で投じなくても、長く試合に残れるようになった。

守備ルールの変更は追い風

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さて2023年シーズンの展望だが、故障さえしなければ、直近2シーズン同様かそれ以上の成績を残せるだろう。

ポイントは守備シフトに関するルール変更だ。近年多く見られた塁間に3人を置くシフトは禁止されることになる。

ライト方向への打球が多い大谷が打席に立つと、相手チームの守備陣は1、2塁間を3人の内野手で守る「大谷シフト」を敷くケースが多かった。これによりヒット性の当たりがアウトになったことが多々あった。ルール変更は大谷の打撃成績を上げる方向に働くだろう。

また2023年3月に開催されるWBC(ワールドベースボールクラシック)に、大谷は参加する予定だ。故障のリスクを不安視する声もあるが、参加を見送ったとしても、スプリングトレーニング中に故障する可能性だってある。ファンであれば大谷が大舞台で活躍する姿は見たいし、本人にとってもいい経験になるだろう。

ジェフ・フレッチャー ロサンゼルス・エンゼルス番記者

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Jeff Fletcher

オレンジカウンティー・レジスター紙のロサンゼルス・エンゼルス番の記者。米野球殿堂入りを決める投票資格も持つ。2013年よりエンゼルスを担当し、大谷の取材に関してはMLBルーキーイヤーから密着取材。日本時代の大谷について徹底的に調べ上げ、現在に至るまで大谷について語り尽くしている。

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