「魚が獲れない日本」を外国のせいにする人の盲点 漁業の歴史を知らないから他国を非難してしまう
また、「ノルウェーは大型漁船主体で日本と違う」というコメントもありましたが、ノルウェー漁業は大型船主体ではありません。11メートル以下の小型漁船が81%占めています。一方で、28メートル以上の大型漁船はわずか4%しかありません(2021年)。
ノルウェーと日本で大きく違うのは水産資源管理です。結果として「繁栄」と「衰退」というまったく対照的な資源状態に至っているのです。水産資源管理が適切に行われているノルウェーの漁業者は、大型漁船から小型漁船まで含めて99%が仕事に満足しています(2016年・SINTEF=ノルウェー産業科学技術研究所)。はたして日本では何%が満足しているのでしょうか。
確かに外国漁船が獲ってしまうから魚が減るという面はあります。1977年に設定された「200海里漁業専管水域」は、当時世界中の海に展開していた世界最大の漁獲量を誇る日本漁船の排斥が背景にありました。日本の漁船は、各国の水産資源にとって脅威でした。
ところが問題の本質は、特定の国が悪いということではなく、国際的な資源管理の仕組みがなかったことです。戦後の食糧不足から始まり、日本には動物性タンパクを魚で国民に供給する必要性が生じていました。国別の漁獲枠でもない限りは、できるだけ獲ろうという力が働きます。そしてそれが乱獲の一因にもなっていったのです。
同じ資源を各国が獲り合えば、それぞれが漁獲できる配分量が減っていきます。ひいては全体の資源量も減ってしまうという最悪のケースに陥ってしまうのです。
スケトウダラが激減した本当の原因は?
次の図は、北海道のスケトウダラ(日本海)の漁獲量推移です。オレンジ色が韓国船の漁獲量で、それ以外の色は日本漁船の漁獲量を示しています。他の魚種でも多く見られる典型的な右肩下がりです。
当時このスケトウダラ資源が減少しているのは、韓国漁船による漁獲が原因と言われていました。200海里漁業専管水域の制定後も、韓国漁船は同漁場での漁獲が可能であったため、割合は低いながらも、日本の漁獲量に影響していました。
韓国漁船の排斥が求められ、ようやく1999年に出て行くことになりました。原因とされていた韓国漁船がいなくなったことで、漁獲量がその後回復するはずでした。ところが、1999年以降の漁獲量推移は、回復どころか激減してしまいました。
この例は、外国漁船の漁獲ばかりに目を向け、自国によるスケトウダラの乱獲を棚に上げて獲り続けた結果ではないでしょうか? 早い段階で資源管理のための有効な手を打たないと、そのツケを払うのに数十年かかることになります。
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