円資産しか持たない人が大損するかもしれない訳 不測の「有事」の際、本当に役立つ資産とは何か?
その後、戦争や気候変動の影響により世界中で物価が上昇。とりわけアメリカでは数十年ぶりのインフレが猛威を振るい、FRBは金融政策を決定するFOMC(アメリカ連邦公開市場委員会)で今年11月2日に4会合連続となる金利引き上げを実施した。FF(フェデラルファンド)金利の誘導目標は3.75%~4.00%に引き上げられ、株式市場や債券市場は価格が下落し、金も2000ドル台から1700ドル台まで下落した。
金融引き締めは地政学リスクではないのだが、株式市場にとっては大きなリスクになる。債券市場にとっても、既存の債券の価格が下落するため、短期的にはリスクになる。そして、中央銀行同士の金利格差が生まれたことなどを背景に、32年ぶりの円安が進行するなど為替市場が大きな影響を受けた。
さらに、ドル価格と反比例して動くことの多い金にとっても、大きなマイナス要因となる。金価格上昇の要因となってきたロシア・ウクライナ戦争はいまだに続いているが、金利上昇で金価格にはブレーキがかかっている。金相場はアクセルとブレーキを同時に踏んでいる状態だ。
戦争開始により価格が急騰し、金利の引き上げで逆に下落したとはいえ、金は有事に強い資産のひとつであることは間違いないようだ。ただ、円ベースで金価格を考えると話はかなりややこしくなってくる。例えば、ロシアがウクライナに侵攻した2月以降の月平均の最高値と最安値を比較してみると次のようになる(金価格は田中貴金属工業調べ、騰落率はロシア・ウクライナ戦争以降の最安値と最高値の騰落率)。
・最高値……1947.83ドル/トロイオンス(3月平均)
↓
・最安値……1664.45ドル/トロイオンス(10月平均)
・最安値……6913円/グラム(2月平均)
↓
・最高値……7920円(10月平均)
ロシア・ウクライナ戦争開始後、金の国際価格は最大300ドル程度下落したわけだが、円ベースでみると円安によって相殺されて、円安がピークに達していた10月には1g当たり=1000円程度上昇していることがわかる。国内の金価格は今も最高値圏に位置している。
下落したのは「アメリカ株」と「円」?
一方、株価はFRBが金利を引き上げ始めた2022年3月以降、敏感に反応している。下記のデータを見るとわかるように、アメリカの平均株価は3割程度下落しているものの、日本の平均株価は上昇している。金利を引き上げなかった日本の株式市場としては当然かもしれないが、「遠くの戦争は買い」という投資格言を地で行く結果といえる。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら