円資産しか持たない人が大損するかもしれない訳 不測の「有事」の際、本当に役立つ資産とは何か?

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ロシアがウクライナに侵攻して9カ月が経過した段階で言えることは、今回の地政学リスクは戦争だけではなく、その結果として表面化した「インフレ」「食糧危機」「気候変動」といったさまざまなリスクが複雑に絡み合い、さらにアメリカ政府が積極的にインフレ対策に乗り出したために、急激な「金融引き締め=金利引き上げ」が加わったことが大きく関係している。

今回のさまざまなリスクの顕在化は、ロシアによるウクライナ侵攻がきっかけになったものの、資源危機や食料危機は気候変動など長期的なリスクともオーバーラップしている。戦争が終われば、それらのリスクが一掃されるというものではない。極端な言い方をすれば、今後は長期にわたって、世界的な規模で「有事」が起こる可能性が高い。

「分散投資」は資産防衛の切り札ではない?

さて、実際にこれからどうすればいいのか……。昔から有事の際の資産防衛には「金やドルなどを含めた分散投資」が定番と言われてきた。「籠に盛られた卵」がよくイメージとして使われるが、どれかひとつの資産が大きく下落して損失を出しても、ダメージは最小限に抑えられる、という考え方だ。

ロシアがウクライナに侵攻した直後、ロシア国民はドル買いや暗号通貨の買いに走ったと言われており、さらに資産価値が簡単に目減りしないクルマや携帯電話に投資する人が多かったと言われる。1998年に起きた「ルーブルショック」と言われる通貨大暴落を経験しているだけに、有事への備えはできているのかもしれない。

一方、今回の有事ではそれまで想定していなかった事態が起きた。戦争から世界的なインフレへと進み、FRBが短期的に金利を大幅に引き上げたために、ドルの「独歩高」という現象を引き起こしてしまった。その影響で、株式は下落し、金利の上昇によって「債券価格」も大きく下落した。

アメリカの伝統的な分散投資手法は「株式60%、債券40%」とされる。本来であれば株が下落しても、債券が上昇する形でポートフォリオ全体の資産価値を維持させる機能が働いた。

それが、今回はFRBの利上げがあまりにも急激で、かつ上げ幅が大きかったために、株式も債券も暴落してしまった。こうした状況はメディアでも指摘されており、「世界株・債券が同時安 欧州発インフレ・景気悪化懸念」(日経新聞 8月24日朝刊)、「『資金の逃避先なし』 6対4投資戦略が崩壊」(ウォール・ストリート・ジャーナル、11月15日配信)などでも指摘されている。

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