日本の安全保障「現実に即した転換」が急がれる訳 新国家安全保障戦略に求められる3正面への対応

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国家安全保障戦略見直しの意義を考える(写真:tantan/PIXTA)
【特集・新国家安全保障戦略のリアル(第1回)】

国家安全保障戦略、防衛計画の大綱および中期防衛力整備計画(戦略3文書)の見直しに向けた政府の検討がヤマ場を迎えている。わが国で初となる現国家安全保障戦略が策定されたのは、第2次安倍政権下の2013年12月のことであり、その後、日本の安全保障環境は激変した。

リベラル国際秩序は大きく後退し、世界は米中対立に象徴される自由主義民主体制と権威主義独裁体制の競争構造へと変貌した。今年2月に勃発したロシアによるウクライナ侵攻は、国家間の大規模な軍事紛争が現実の脅威であることを示している。日本は、巨大化した経済力と強大化した軍事力をもって台湾併合を狙う中国、核・ミサイル能力の強化に邁進する北朝鮮、そして核大国で交戦中のロシアという3正面への対応を迫られている。

一方、唯一の同盟国たるアメリカは相対的な国力の低下と国内の分断に悩まされ、日本を含む同盟国やパートナー国との共同に依存する意図を明らかにしている。また、情報通信技術等の著しい進歩によって、今後の「戦い方」は従来の陸海空から宇宙・サイバーへ、さらには認知領域へと広がり、軍事だけでなく外交・経済・情報・技術等のあらゆる手段を動員する総合戦となることが確実だ。

これらを踏まえると、新戦略文書は現存する脅威に対処し、抑止するリアルな戦略に転換する必要がある。わが国が直面する恐れのある事態と戦い方を具体的に想像し、保持すべき能力や体制を総合的に導き、所要の資源を投資して、脅威に備えなければならない。同時に、新戦略はインド太平洋の平和と安定を守るというわが国の意思と進路の国際社会に向けた宣言とする必要がある。

新国家安全保障戦略の脅威認識

新戦略の最も重要な課題は、現存する脅威に対しどのようにリアルな処方箋を描けるか、である。すなわち、わが国の死活的国益に対する最も深刻な脅威を特定し、脅威の顕在化を抑止すること、抑止が破れた場合でも有効な対処によって国益の棄損を局限することを目的に、最適な手段と方法を編み出す作業の回答だ。

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