年末の帰省で確認を、認知症「実家の変化」リスト 遠距離でも適切なケアを進める関わり方のコツ

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私自身も、故郷の沖縄で暮らしていた母を近くに呼び寄せ、施設で看取りました。在宅医として24時間365日体制で働く私は、母の様子を見に頻繁に沖縄に帰ることがどうしても難しく、母の状況も考えると近くの施設に入ってもらうのがお互いにとって良いという話になったのです。

日本では、親を施設に入れることに対して、どこかマイナスなイメージがあるように思いますが、実際に経験してみると、施設ならではの良さもたくさん感じました。

施設で暮らす良さも実感

施設で母の日に100本のバラを持たせてもらって写真撮影したときの、母のうれしそうな顔を思い出します。施設ではこうした季節行事や各種レクリエーションが充実しているぶん、自宅の環境にはない賑やかさがあり、母も楽しそうに過ごせていました。

自宅で過ごす大きなメリットの1つに自由に過ごせることがありますが、施設に入れば24時間誰かがいるという安心感もあります。親が最期を過ごす場所について悩む人も多いですが、まずは親の希望を聞いてみる。そして自分が何をどこまでできるのか、そして何をしてあげたいのかを、費用の面も含めて現実的に考えることが大切です。

ハープの演奏
クリスマスにはハープの演奏も(写真:向日葵クリニックホームページより)

一口に施設といっても、さまざまな種類や特徴があります。まずはどんな施設があるのか、その選択肢を知っておく。そのなかで親が過ごすならどのような施設が良いのか考えておきましょう。

離れた場所に住んでいる場合には、いざというときに「親を呼ぶ」のか、「自分が行く」のかの判断も迫られます。そのときになって慌てないためにも、なるべく元気なうちに話し合っておくと良いでしょう。

「家で過ごしたい」という本人の希望をかなえることが難しい場合、私が見てきたなかでは、「これ以上、家で過ごすのは無理だから」と本人にはっきり言って、親を施設に連れてきた娘さんもいらっしゃいました。

1人でトイレに行けなくなったことをきっかけに、施設入所を決めるケースは多いですが、この親子もまさにその例。介護する側の負担を踏まえると、本人の意思を尊重とばかりはいかないときもあります。

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認知症でなくても、年を重ねることで判断能力が落ちる人も少なくありません。ときに家族が強気に出ないと、適切なケアが進まない場合もあります。

本人の希望を叶えることはとても大切ですが、同じぐらい家族の人生も大切です。介護される側の希望と、介護する側の人生の両方を大切にしながら、お互いに無理のない関わり方や支え方を考えてほしいと思います。

(構成:ライター・松岡かすみ)

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中村 明澄 向日葵クリニック院長 在宅医療専門医 緩和医療専門医 家庭医療専門医

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なかむら あすみ / Asumi Nakamura

2000年、東京女子医科大学卒業。国立病院機構東京医療センター総合内科、筑波大学附属病院総合診療科を経て、2012年8月より千葉市の在宅医療を担う向日葵ホームクリニックを継承。2017年11月より千葉県八千代市に移転し「向日葵クリニック」として新規開業。訪問看護ステーション「向日葵ナースステーション」・緩和ケアの専門施設「メディカルホームKuKuRu」を併設。病院、特別支援学校、高齢者の福祉施設などで、ミュージカルの上演をしているNPO法人キャトル・リーフも理事長として運営。近著に『在宅医が伝えたい 「幸せな最期」を過ごすために大切な21のこと』(講談社+α新書)。

 

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