"東京捨てた"コンサル会社に起きた「驚きの変化」 川越→池袋→大宮と事務所を三転し見えたこと

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小さな会社でも新卒を採用できたことを大手求人サイトが着目。シンミドウに、自らの求人サイト利用の成功事例を武器とした求人広告の代理店になることを勧めます。新卒社員研修と親和性がある仕事で、自社の新卒社員にも向いていると判断し、求人広告代理店の事業を始めます。やがて、主力事業となります。

新卒が電話でアポを取ったら、笹田社長と訪問し、商談し、受注します。受注したら取材し、原稿を作成し、求人サイトへの掲載の段取りをするという仕事です。

事業は立ち上がりましたが、2008年のリーマンショックにより、2009年から就職氷河期が訪れます。市場のライフサイクルに影響が及んで代理店同士の消耗戦となり、薄利多売となったのです。

川越→池袋→大宮と事務所を三転

社員数7~8人の規模になっていた2012年、笹田社長は事務所を池袋から大宮へ移転します。その理由は東京と埼玉以北とでは仕事のやりやすさ、利益性が異なるからです。

東京と、埼玉と、栃木、群馬とでは、アポの取りやすさ、競合見積のライバルの数、受注する割合、1件当たりの粗利が異なりました。東京は厳しく、栃木、群馬は緩やかです。

埼玉はその中間的でした。競争性だけを考えれば栃木、群馬がよいのですが、市場規模としては埼玉のほうがはるかに大きい。また、社員のほとんどが埼玉在住であることから、移転先をさいたま市の大宮としました。

社員のなかには反対もありました。東京の会社だから就職したのに、埼玉の会社になっては残念、と。「東京での競争に勝てなくて、都落ちするのか」と言った同業者もいました。それでも、笹田社長は競争に勝ち抜くために、大宮移転を決めたのです。

東京は、市場として魅力的です。大きい。成長性が高い。イメージがよい。だから多くの企業が重視しています。ゆえに、競争が激しく、消耗戦となりがちです。シェアは分散し、不安定です。強者の体力があって初めて戦える市場です。社員7~8人で年商1億円の典型的な弱者のシンミドウが、東京の新卒採用サイトの求人広告代理店として存在感を発揮するのは困難です。

一方、東京と隣接しているがゆえに後回しとなる市場が埼玉、栃木、群馬です。地場のライバルが少ない。東京からは遠いイメージがあり、東京から営業に来る会社も少ないです。

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