加齢によっても起こる「網膜剥離」のメカニズム 受診をせずに放置すると失明につながることも

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これは一見、良いことのように思えますが新生血管は急ごしらえの血管のため破れやすく、また血管が伸びるときに周りの組織を引っ張りながら進むため網膜が剥がれることがあるのです。進行すると失明に至ることもあります。

もう1つは滲出性(しんしゅつせい)網膜剥離と呼ばれ、網膜のすぐ下に水が溜まってしまい、網膜が浮き上がるために剥がれてしまう疾患です。これは主にぶどう膜炎という眼の炎症によって起こります。

網膜剥離の原因は複数ある

このように種々の原因がある網膜剥離ですが、糖尿病によるものやアトピーによるものであればその疾患自体を予防・治療すればよいものの、加齢や近視に伴うものについては有効な予防方法は残念ながら現状ありません。また網膜剥離は遺伝する場合もあります。したがって飛蚊症など気になる症状がある方や、ご家族に網膜剥離を起こした方がいる場合は特に、定期的に眼科で眼の様子をチェックすることが重要です。

眼科疾患は患者さん本人が「どのように見えづらいか」を医師が正確に把握することがとても重要であり、些細なことと思っても遠慮なく伝えましょう。ポイントとしてはいつ頃から症状があるのか、どのように変化したのか(悪くなった、他の症状がでてきたなど)を整理して伝えていただければと思います。

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また、眼底検査など光を当てて写真を撮る際、眩しさのあまり顔を背けたりキョロキョロと眼を動かしてしまったりする方がいらっしゃいますが、少しの動きで写真の角度が大きく変わってしまうため、できるだけ1点を凝視するようにしましょう。遠くをすこし睨むように力を入れて見つめると眼の位置が固定されやすくなります。ただ、つらいときは遠慮せず医師や検査技師に伝えましょう。眩しさを抑える目薬を点眼する、少し休んでから再検査することも可能です。

定期的な眼科健診によって、網膜剥離など治療が必要な疾患をいち早く見つけることで、いくつになってもクリアな視界を保っていただければと思います。

上原 桃子 医師・産業医

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うえはら ももこ / Momoko Uehara

横浜市立大学卒。一般社団法人日本メンタルアップ支援機構理事。身体とこころの健康、未病の活動に尽力し、健康経営に関する医療系書籍の編集にも関わっている。医師と患者のコミュニケーションを医療関係者、患者双方の視点から見つめ直すことを課題とし、とくに働く女性のライフスタイルについて提案・貢献することを目指している。

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