加齢によっても起こる「網膜剥離」のメカニズム 受診をせずに放置すると失明につながることも

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また、網膜剥離は加齢によっても起こります。眼の中は本来、硝子体というゼリー様の物質で満たされていて球体を保っていますが、硝子体は50~60歳頃から少しずつ縮みながらサラサラの液体に自然と変化していきます。硝子体が縮むときに、網膜が一緒に剥がれてきてしまい、穴が開くことで網膜剥離が引き起こされるのです。

症状は気づかれないまま進行する

症状は飛蚊症や、光視症という目を閉じてもチラチラと光が見える、暗いところで雷のようなピカッとした光が見える現象が特徴的です。視力低下や視野の障害は進行するまで気づかれないことも多いため、自分では問題なく見えていると思っても、上記のような気になる症状があれば早めに近くの眼科を受診しましょう。

診断は眼底検査という、網膜の写真を撮る検査で比較的容易に診断できます。治療は基本的に手術であり、レーザーで網膜を焼き固める「網膜光凝固術(もうまくひかりぎょうこじゅつ)」または網膜の穴を塞ぐようにガスなどを眼の中に注入し、その圧力で剥がれた網膜を眼の内側に押し付けて固定させる「硝子体手術」がメジャーな方法です。

網膜光凝固術は外来で10分程度で行うことができる比較的簡便な手術ですが、発症初期にしか適応がありません。硝子体手術は眼の局所麻酔による手術であり、入院が必要です。手術自体は1時間程度で終わりますが、ガスは空気より軽いため、網膜を固定するために1週間程度うつ伏せの姿勢を続ける必要があります。これらの手術で基本的には治療が可能ですが、中には複数回手術が必要になったり結果的に失明につながる場合もあり、早期発見・早期治療が大切な疾患といえます。

網膜剥離は穴が開く以外の原因で起こることもあります。1つは牽引性(けんいんせい)網膜剝離とよばれ、糖尿病が主な原因となる疾患です。網膜の血管は本来網膜に酸素を届けていますが、糖尿病の進行によって、網膜の血管が傷ついて詰まってしまいます。すると、そのままでは網膜が酸素不足になってしまうため、これを補おうと網膜に新しい血管(新生血管)が伸びてきます。

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