1年目のハッカソンの2日間は、空気が最初と最後で全く違いました。最初はどよーんとした感じで、学生たちはグリー本社のある六本木ヒルズなんて行ったことがない。まず場所に圧倒されてもじもじしていました(笑)。ハッカソンでは、エンジニアの方々が学生のグループごとに少人数入りますが、教育学部にいる学生というのは愛想がいい人が多いんです。
異質の文化と出会うことの重要性
一方で、エンジニアの方々は必ずしもそういう人たちばかりではないわけです。ゲームづくりを仕事にされている、プロの方々です。教育学部の学生からするとやはり接し慣れていないので、最初は「この人たちと一緒に2日間でアプリを無事に作れるのかな」という思いもあったはずです(笑)。
でも、実際はグリーのエンジニアの方々はとても優しくて、とまどっている学生を受け止め、ゲームづくりをリードしてくださいました。たぶん、エンジニアの方々から見たら学生たちの行動にはありえないことも沢山あったと思います。それでも、最後まで真摯に対応して下さいました。そこで学生たちの間にも「この人たちについていけばいいんだ」という安心感が出て来たんですね。「エンジニアの方々が頑張って下さっているんだったら、自分たちもきちんとやらなければならない」という使命感も学生の中に芽生えました。
2日目は完全に打ち解けて、どのグループも完全にチームになっていましたね。エンジニアの方々とハッカソンを一緒に行ったことは、学生にとっては言わば異文化交流でした。ある意味で自分たちが異文化だということを自覚できた、貴重な場だったと思います。
六本木で浮いてしまうとか、六本木にいる自分が落ち着かないとか、世の中は西千葉にある千葉大学教育学部とは違うんだということですね(笑)。どちらが世の中かは分かりませんが、少なくともこのような世界もあるという、自分たちが必ず正しいわけではないという相対化する機会に繋がりました。これは学生たちの人生において本当に大きいと思います。
――授業が終わった後でも学生たちに変化はありましたか?
1年目が終わった後、偶然絵を描いて何かを作るという機会が研究室関連で多かったんです。それまでは外注していたポスターの絵なども、ハッカソンを通じて絵が上手な学生がいることが分かったので、彼女に描いてもらおうとか。私は授業づくりを行うNPO(企業教育研究会)で理事長をしていますが、そのNPOでも教材をつくるときに何人かの学生に絵を描いてもらったり、簡単なアニメ教材を作る時には学生に声優をやってもらったり。活躍の場が広がった学生が増えました。また、クオリティの高いものを作ろうという雰囲気になっていますね。
――これからは何かに特化したような学生が社会、企業で重宝されるということでしょうか。
そう思っています。個人でできることは限られていて、何かしようとすると協働でやるしかない。企業もそうですが、学校教育でもその通りです。以前、教師は学級王国を一人で作るということがありましたが、今はそれでは立ち行かず、「チーム学校」とみんな言い出しています。つまり、教職員が連携をしながら教育を行うことが普通になっています。
考えてみれば、一人で30人も40人も教えるということばかりでは無理がありますよね。これからは企業も学校もみんなチームで動くということがより大事になってきて、そうなるとチームの中でかけがえのない役割を担える人がやっぱり強いですね。
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