「PR漬け社会」の到来で起きた情報流通の主役交代 6兆円の広告市場に染み出す、新興勢力の正体

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プラットフォームで無料のニュースを読める時代に、マスメディアの優位性は低下。その広告価値にもひびが入った。

一方、企業はSNSや動画サイトにアカウントを開設し、発信したいコンテンツを投下すれば、一般のコンテンツと横並びで消費者に届けられるようになった。むろん、高額な広告費もかからない。

トヨタ自動車の「トヨタイムズ」に代表される企業のオウンドメディアもすっかり定着。こうして企業は、マスメディア川の上空を飛び越える“空路”を得た。

キー局の元アナウンサーを複数人抱え、豊田章男社長も積極的に参画するトヨタ自動車の「トヨタイムズ」

かつてはメディアに向けたものだったプレスリリースも、SNSを介し、1つのコンテンツとして直接消費者に届くようになった。国内最大のプレスリリース配信サービス「PR TIMES」も急成長している。

SDGsや社会問題などに関し、社会から企業への要請が増えてきたこともPRの重要性を押し上げた。社会が求めてきた責任に対し、そのアンサーとして環境配慮型製品や社内の男女平等施策について発信するなど、双方向型のコミュニケーションで自分たちを認めてもらう必要が出てきたのだ。

目的や手法が多様化したことで、企業広報からは「PRの手段を選ぶのがすごく難しくなった」と戸惑いの声が上がっている。

このチャンスを逃すまいと、PR会社もまた矢継ぎ早に業務領域を広げていった。コロナ禍の影響を受けてもなお、PR業の市場は2020年に1111億円。イベントやデジタルでのPRなどまで、より広義の概念で捉えれば、14年ですでに4351億円に達している。

PR先進国の米国では21年に8236億円に上っており、日本にもまだ伸びしろはありそうだ。

PR市場で暴れる異端児

そんな中、「PR会社の潜在市場はもう1桁上」と言わんばかりに業界で暴れ回るのが、最大手のベクトルだ。PR会社としてのカバー領域を拡張するだけでなく、6兆円の広告業界のディスラプター(破壊者)になるとぶち上げている。

例えば最近、タクシーでよく見かけるようになったサイネージ広告「GROWTH」も、実はベクトルが仕掛けたものだ。あるベクトル関係者は「パブリシティーではメディアに頭を下げているが、広告ではそのメディアと需要を奪い合っているのが実情」と語る。

また、あるPR会社の幹部は「以前は電通・博報堂の案件におけるパブリシティーの枠を、PR会社同士で競わされていた。が、いつの間にか電博やデジタルマーケ企業と横並びになるコンペが増えてきて、今ではわれわれが競わせる側に立つケースも出てきた」と明かす。

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