バフェット明言!「エリートが仕掛ける」階級闘争 大都市ハブの上流階級vs.ハートランド労働者

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他方、フィジカルズは「ありふれた物理的現実」で仕事をする人びとのことを指す。具体的には、農業、建設業、製造業、運送業、鉱業など、物質世界と切り離せない職業に従事している人びとで、ヴァーチャルズの社会は依然として彼らの働きに依存している。

これは、デイヴィッド・グッドハートの「エニウェア族」と「サムウェア族」の対比に似ている。リンドの説明を借りれば、エニウェア族は「個人の地位はどこの国の地域のコミュニティに属しているかではなく、どれだけ権威ある職業に就いているかによって決まり、大都市において出世するために……絶えず変化するトランスナショナル・エリートの流儀を好む」人びとを指す。

他方、サムウェア族は「自分たちの地位の低い仕事よりも、特定の地域コミュニティや大家族の一員であるという個人のアイデンティティのほうを」大切と考える人びとを指し、その多くは労働者階級だ。

「ハブ」と「ハートランド」

リンドのいう上流階級の管理者(経営者)エリートと労働者階級との対立も、「ヴァーチャルズ/フィジカルズ」「エニウェア族/サムウェア族」の対立構図とおおむね似たものと考えてよいだろう。いずれも、グローバリズムに親和的なのは前者のほうだ。彼らの多くはニューヨークやロンドンといった大都市を拠点として活動し、国境を越えて世界の大都市間を自由に移動する。

その点に関してリンドの分析が興味深いのは、「ハブ」と「ハートランド」という階級格差の地理的な現れに着目している点だ。しばしば「都市と農村の格差」ということがいわれるが、リンドの分け方のほうが実態を細かく、より正確に反映しているといえるだろう。

リンドは、高学歴の上流階級や圧倒的多数のワーキングプアの移民が暮らす人口密度の高い地域を「ハブ」、土着の(native)白人が大半を占める労働者階級が暮らす人口密度の低い地域を「ハートランド」と呼んでいる。ハートランドは、ハブの周辺、あるいはハブとハブのあいだに位置する広大な地域を指す。

「党派間の地理的な相違は、環境政策、貿易、移民、価値観などをめぐってハブ都市の上流階級とハートランドの労働者階級の利害が衝突する階級対立の代理として機能する傾向がある」とリンドはいう。

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