バフェット明言!「エリートが仕掛ける」階級闘争 大都市ハブの上流階級vs.ハートランド労働者
新しい階級闘争をどう終わらせるか? リンドは上流階級の管理者(経営者)エリートの打倒を唱えているわけではない。「多元主義者にとって、エリートのいない世界でも生きられるという考えは、権力のない世界でも生きられるという考えと同じくらい愚かしく危険である」というイギリスの政治家デイヴィッド・マーカンドのことばを引用していることからもそれは明らかだ。
「政治・経済・文化それぞれの領域における政策決定過程に、すべての階級や主要な下位文化集団をある程度組み込むことで」テクノクラート新自由主義者や煽動的ポピュリストの介入を阻止することができる。
つまり、政治領域の「区」という行政体、経済領域における「ギルド」、文化領域における「集会」が、労働者階級の市民を代表して、それぞれの領域のエリート層に対して「拮抗力」を行使できるようにすることが必要だとリンドは力説する。
ジョン・K・ガルブレイスが『アメリカの資本主義』のなかで打ち出した概念が「拮抗力」だ。アメリカの資本主義経済において巨大企業の市場支配力を抑制する力として、「拮抗力」が「競争」に代わる新たな力になるとガルブレイスは考えた。拮抗力によるチェック・アンド・バランスがうまく機能することで、多元的民主主義は安定的に維持される。
中野・施両氏の「解説」も必読
最後に、巻頭と巻末に掲載された二人の解説がたいへん読み応えがあることも付け加えておきたい。
勘所を押さえた中野剛志氏の切れ味ある解説「『啓発されたリベラル・ナショナリズム』という思想」は、日本ではまだそれほど知名度が高いとはいえないマイケル・リンドの思想を知るうえで有益であり、かつリンドのすぐれたポピュリズム理解を知ることのできる第6章「ロシアの操り人形とナチス」は日本の読者には必読だと述べているが、まったく同感だ。
監訳者の施光恒氏による丁寧な解説「新自由主義的改革に反省を迫り、民主的多元主義の再生を促す書」は、リンドの書が主として欧米社会を論じながら、そこに日本人が学ぶべき重要な点のあることが説得力ある筆致で明快に語られている。
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