バフェット明言!「エリートが仕掛ける」階級闘争 大都市ハブの上流階級vs.ハートランド労働者

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ジャスティン・トルドー首相は、2月14日に政府の緊急権限を発動してこれに対処した。この措置により、抗議につながる銀行口座や暗号通貨基金の凍結が可能となった。前出のN. S. Lyonsのいう「フィジカルズ」がヴァーチャルな世界にアクセスすることを阻止したのだ。

この件は、2月19日付のニューヨークタイムズ紙の論評「新しい階級闘争がカナダに到来(A New Class War Comes to Canada)」でロス・ダウサットが取り上げている。なおトルドー首相は、カナダの三大大学のうち2校で学位を取得し、父がピエール・トルドー元首相という生粋のエリートだ。

「小さな小隊」と「寄生虫」

こうした社会の分断を克服し、上級階級のエリートによって不安定な境遇を強いられている人びとに安定を取り戻させること。それが今日の喫緊の課題だ。その方途として、民主的多元主義の再生が切望される。

リンドが書いているように、「民主的多元主義は、社会というものを、原子化された個人からなる流動的なかたまりではなく、それぞれが独自の制度と代表者を持つ多くの正当な共同体からなる一つの複雑な全体であると考える」。

多元主義者は、エドマンド・バークのいう「公的な愛情」が育まれる場所としての「小さな小隊」や、トマス・ホッブズのいう「自然人の内臓に巣食う寄生虫」を「民主主義の文化を感染から守る抗体」とみなす。邦訳では、バークのplatoonsをそのまま「小隊」と訳したが、これは行動を同じくする人びとの小集団を意味する語でもある。

つまり、政治・経済・文化において各々共通の目的を持つ人びとが参加するさまざまな社会集団・中間組織(=小さな小隊)が「それぞれ実質的な交渉力を持ち、自らの利益と価値観を守る能力を備え、終わりのない制度化された交渉を行うこと」。それが「真の民主主義」にとって不可欠なのだ。

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