人的資本経営がよくわからない人に伝えたい本質 企業の存在意義に沿った学び直しが求められる訳

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それでは、あるべき人的資本経営とは、どのような姿をしているのか。人材版伊藤レポートにもあるように、それは経営戦略と人材戦略の連動から導くものであるでしょう。そもそも企業の経営戦略とは、企業が掲げるミッション・ビジョン・バリュー、さらにその先にある「パーパス」の実現のために存在するものです。

マーケティング戦略・戦術、採用戦略、企業文化や世界観に至るまで、すべてはパーパスから紐解かれるべきもの。同様に「人的資本の可視化」も、人材版伊藤レポートが示す「人材戦略の構築」も、パーパス、ミッション・ビジョン・バリュー、経営戦略等を実現するための手段として位置づける必要があります。

「人的資本の可視化」と「人材戦略の構築」はパーパス等実現のための手段

実務・戦術面で必要なのが「リスキル・学び直し」

人的資本経営において戦略的に必要なことが経営戦略と人材戦略の連動だとするなら、実務・戦術面で必要なことが、人材版伊藤レポートが示した「リスキル・学び直し」です。それは、先ほどPEST分析やメガトレンド分析で示した背景から、企業における人材要件、人材開発、組織開発が高度化、難度化、専門化していることが理由です。

リスキリングは、今や日本のみならず、世界的な共通言語となりました。2018年のダボス会議では「リスキル革命」と題したセッションが行われ、現在はアメリカ商工会議所も「リスキリング&アップスキリングに注力する」という方針を掲げています。アメリカン・エキスプレスのBtoB顧客向けのサイトでは「大退職時代のリスキリング&アップスキリング」と題された記事を読むことができます。

これは、アメリカで労働者の大量離職(グレート・レジグネーション)が生じている現実を受けてのこと。辞める人材側は新しい職への転身に備えるため、辞められる企業側は新しい人材を採用するため、今後ますますリスキルが重要となるでしょう。アメリカのトップビジネススクールのなかにも「reskill/upskill 4 IR leaders」(第4次産業革命のリーダーへとリスキル/アップスキルすべし)をキーワードに掲げる例があるほどです。

では具体的に、どのようなリスキリングが求められているのでしょうか。以下に紹介するのは、私が経営人材のリスキリングのため顧客企業に提供しているコンテンツの一例です。

VCUA時代における経営人材のリスキリング

一言でいえば、いま要求されているのは「DX人材に向けたリスキリング」です。従来の文系人材は、数的な素養を身につけるといっても、せいぜい定量分析まで。しかし今、DX人材には、統計分析、プログラム、数学等、データサイエンス全般の素養をつける必要が生じています。

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