人的資本経営がよくわからない人に伝えたい本質 企業の存在意義に沿った学び直しが求められる訳
例えば経済的要因に注目すると、円安が進み、ビッグマック指数やiPhone指数は世界最安国レベルになるなど「安い日本」が問題視されています。安いのは物価だけではありません。労働者の平均賃金もこの30年間ほとんど上がっていないのです。賃金上昇のためにも人的資本経営は重要です。
さらに昨今のメガトレンドとして、私は常々「デジタル化、サービス化、無形資産化、プラットフォーム化」を指摘していますが、特に無形資産とは人的資本そのものです。不動産や機械設備など目に見える有形資産が企業価値の多くを占めた時代は終わり、人材やITなど目に見えない無形資産が、企業価値を決める時代がやってきている。アメリカS&P500を構成する代表的な500社も、企業価値の8割以上を無形資産が占めています。ちなみに日本の上場企業の企業価値において無形資産が占める割合は2~3割に過ぎません。
「人的資本可視化指針」の中身
こうした状況下、来年度から日本の上場企業には人的資本経営の情報開示が義務付けられ、今年の8月には「人的資本可視化指針」が公表されました。そこでは可視化される対象である「スキル」「採用」「リーダーシップ」7分野19項目が例示されたほか、
・人的資本への投資はその中核要素であり、社会のサステナビリティと企業の成長・収益力の両立を図る「サステナビリティ経営」の重要要素
・経営者、投資家、そして従業員をはじめとするステークホルダー間の相互理解を深めるため、「人的資本の可視化」が不可欠
との認識が示されています。
もう1つ重要な資料に、経済産業省から公表されている「人材版伊藤レポート」があります。これは、人的資本の重要性を示すとともに「人的資本経営という変革を、どう具体化し、実践に移していくかを主眼とし、それに有用となるアイディアを提示するもの」。
具体的には「経営戦略と人材戦略を連動」を重視し、そこで必要とされる5つの共有要素として「リスキル・学び直し」が挙げられています。人的資本可視化指針においても、人材戦略のありかたについて提言した人的資本可視化指針と、人材戦略の構築のしかたにまで踏み込んだ伊藤版人材レポートをあわせて活用することで相乗効果が期待できると書かれています。
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