人的資本経営がよくわからない人に伝えたい本質 企業の存在意義に沿った学び直しが求められる訳
2023年度から日本の上場企業に対して人的資本に関する情報開示が義務付けられる予定です。それに先駆け、今年8月には内閣官房から「人的資本可視化指針」が公表されました。また2020年9月には、経済産業省から「人材版伊藤レポート」が発表され、経営戦略と連動した人材戦略の指針が示されています。
このように、人材の価値を最大限に生かすことで企業価値向上へとつなげていく「人的資本経営」の取り組みが加速しています。
並行して、VUCA(Volatility=変動性、Uncertainty=不確実性、Complexity=複雑性、Ambiguity=曖昧性)の時代に呼応するかたちで、人材に求められるスキルが大きく変わっています。政府は10月にまとめた総合経済対策に、企業の賃上げや成長を促すものとして働くひとの学び直しを意味する「リスキリング」を盛り込みました。岸田首相も自ら、リスキリングのための「人への投資」を拡充、5年間で1兆円を投入すると表明しています。
「世界はどう変わりつつあるか?」とほぼイコール
こうした動きの背景には何があるのでしょうか。それは「世界はどう変わりつつあるか」という問いと、ほぼイコールです。
マクロ的に世界を俯瞰すれば、気候変動問題により「もっと暑くなる」ことは間違いありません。カーボンニュートラルの達成がビジネスにおいて支持されるようになるのは1つの必然です。アンドリュー・S・ウィンストンは著書『ビッグ・ピボット』のなかで、「もっと暑くなる」に加えて「もっと足りなくなる」「もはや隠せない」を並べました。
足りなくなるのは、例えば資源であり、隠せないのはガバナンスや社員エンゲージメントなどでしょう。人的資本経営は、このうち「もはや隠せない」ものにあたりそうです。本気で社員の価値を上げようと取り組む企業が支持を集め、そうでない企業は支持を失う時代です。そして「足りなくなる」のは人的資本そのもの。特に少子高齢化が進展する日本では、労働力人口の減少は喫緊の課題です。
人的資本経営の重要性が増している背景について、自社を取り巻く外部環境が、現在もしくは将来的にどのような影響を与えるかを把握・予測するためのフレームワークである「PEST分析」(Politics=政治、Economy=経済、Society=社会、Technology=技術)を行ったのが以下の図です。
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