人的資本経営がよくわからない人に伝えたい本質 企業の存在意義に沿った学び直しが求められる訳
私は昨年、あるビジネス誌で「文系人間のための理系の教養入門」というタイトルの記事を寄稿しました。私は大学時代までは典型的な文系人間でした。ところが三菱銀行に入行後、銀行業務のなかでも高度な数的素養が要求されるストラクチャードファイナンスの部門に配属に。その後シカゴ大学のビジネススクールに留学し、ファイナンス、計量経済/データサイエンス、企業戦略を専攻しました。こうした経験から、文系人間が理系の教養を学ぶにあたってどこに躓くのか、まだどのような順序で学ぶべきか、体感しています。
しかし、ここで重要なのは、やはり企業の存在意義を意味する「パーパス」です。文系人材が闇雲に数学、プログラミング、統計分析を身につけようとしてもその努力は実を結ばないことでしょう。そのスキルが、パーパスの実現に寄与するような意思決定力、問題解決力、価値創造力、破壊的イノベーションを起こす力、あるいは分析力×洞察力×構想力の強化に役立ってこそ、あるべきリスキリングの姿です。
直接的にパーパスに紐づいているように見えないケースもあるかもしれませんが、少なくともその事業部、その部門、そのポジションにおけるビジネス上必要なリスキリングであることが求められます。
2030年において重要な3つの力
今私たち1人ひとりが問うべきは「自社において必要なリスキリングとは何か」ということになるでしょう。それは自社のパーパスであり、ミッション・ビジョン・バリューの実現のための手段であるリスキリングであるという点は、これまで説明してきた通りです。
当然、会社あるいは個人が従事するビジネスによって、リスキリングの目的や中身はまちまちです。しかし、そのなかでも普遍的なものがあるとするなら、どのようなスキルか。そう考えるとき、OECDが世界標準で求められている教育を検討した「OECDフレームワーク2030」が、大きなヒントになります。
そこでは、2030年において重要とされる資質として、新たな価値を創造する力、責任ある行動を取る力、対立やジレンマを克服する力の3つが挙げられています。特にビジネスにおいては、新たな価値を創造する力に重きが置かれることになるでしょう。
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