アウディ「地熱発電の八幡平」でツアー実施の訳 地熱発電の厳しい現実とBEVシフトの相関性

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だが、国は当時、それまで地熱調査がうまく進まなかったことなどから、地熱開発には消極的だったという。それでも、松尾村は東化工(のちの日本重化学工業)の協力により調査を実施し、1966年10月8日に日本初の商用地熱発電所として松川地熱発電所が動き出した。

それにちなんで、独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)、日本地熱協会、電気事業連合会が、共同で2016年に「10月8日」を「地熱発電の日」として制定している。

地熱発電所は安定的な“純国産エネルギー”

今回は、2019年1月に営業運転を開始した、松尾八幡平地熱発電所を詳しく見た。この周辺には、前述の松川地熱発電所のほか、岩手県内に葛根田(かっこんだ)地熱発電所、秋田との県境を少し超えたところに大沼地熱発電所と澄川地熱発電所があるなど、いわば“地熱発電所銀座”ともいえるような地域だ。

アウディの最新BEVに乗って松尾八幡平地熱発電所へ(筆者撮影)

そのほか、日本では九州の大分県、熊本県、鹿児島県の周辺に地熱発電所が集中しているが、それは火山のマグマに熱せられた高温・高圧の地下水が溜まっている、地熱貯留層の状態に関係するため。地熱発電所では、地熱貯留層に対して地上から井戸を掘り、そこから蒸気や熱水を取り出す。これを、生産井(せいさんせい)と呼ぶ。

松尾八幡平地熱発電所の関係者によると、合計4本掘った生産井のうち、1本からは蒸気や熱水がほとんど出ないなどの事情から、現状では深度約2kmの2本の生産井を使用している。生産井の1本当たりの掘削コストは、6~8億円だという。

生産井がある生産基地から、約6kmのパイプラインを蒸気・熱水が運ばれ、発電基地内の気水分離器で蒸気と温水に分離。そのうちの蒸気が三菱日立パワーシステムズ製のタービン・発電機をまわし、発電出力7499kW、送電電力7000kWを確保している。

エネルギー資源が乏しい日本で、地熱発電は長期間にわたり安定的な電力供給が可能な“純国産エネルギー”として注目されている発電方法だ。

同じ再生可能エネルギーである風力発電や太陽光発電と比べると、発電できる時間帯や天候に左右されることがないため、設備利用率が83%と、風力発電の20%、太陽光発電の12%と比較してかなり高い(資源エネルギー庁資料)。

地熱発電の現状と今後について、今回のツアーに同行した東北大学流体科学研究所 流動創成研究部門 自然構造デザイン研究分野 准教授の鈴木杏奈氏から、詳しい説明があった。

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